ひどいかぜでした・・・・

4月は年度初めで、毎年忙しい月ですが、今年は気候のせいでしょうか、暑くなったり寒くなったり、雨が多かったりで、喘息の発作も多いし、なんかへんなかぜが流行っています。
かくいう私も4月6日から約3週間風邪に悩まされました。患者さんからいただいたんだと思いますが、巷で流行っている「のどかぜ」です。ウイルス性の咽頭炎でしょう。のどがいがいがして、から咳が出て、ときに咳き込んでおえっとなるほどです。私はこのひき初めに、患者さんに検査結果や病気の説明やアレルゲン食品の食べ方等々、1日中しゃべる仕事が続いたのですっかりこじらせてしまい、声が出なくなり、皆さまにはすっかりご迷惑、ご心配をおかけしてしまいました。後半の1週間は、のどについた病原体を出すために痰が絡んで咳き込んで、というのがだんだん日を追うごとに減っていって、完治です。たまに病気をすると、本当に咳というのは、からだを守るための生理的反射で、異物を出したり、感染のあとの気道のお掃除をしてるなあと身をもって思いました。4月はそのほかにもいろいろもりだくさんの問題があって、仕事的にも個人的にも結構つらい月となりました。
先週の土曜日は、クリニックでの診療が終わったのが6時でしたが、そのあと、発達障害の研究会に勉強に行ってきました。アレルギーを専門にやっていると、そのほかの子どもの病気の勉強を深くする機会が少ないのですが、最近発達障害の子どもが増えていて、小児科医にも知識が要求されます。アレルギーの専門医以上に小児の発達の専門医は少なく、大阪大学の小児科の発達神経の先生のお話を伺ったのですが、紹介しても半年待ちの状態だそうです。ちょっと変わってる、じっとしてない、人のいうことを聞かない、マイペース、うまく友達と遊べない、というお子さんはわりと多いのですが、たいていは親や先生たちの理解と許容があればなんとかなります。診断や治療も必要ですが、子どもに合わせた療育というのが求められているなあと思いました。

なぜ春に患者さんが多いのか

暖かくなり、桜もいつもより早く咲き始めているそうです(見てない)。
しかしこのよき季節のなか、亀崎はひたすら働いています(涙)。患者さん方には、お待たせしたり予約が取れなかったり十分に聞きたいことが聞けなかったり、不自由をおかけしてすみません(礼!)。いつも年度末は、保育園・幼稚園・小学校の入園・入学に際して、食物アレルギーの検査や診断書が多いので外来受診の患者さんが増えるのですが、今年は2月から混み始めて、あれあれと思っていたら、3月はひどいことになりました。
特に午前中の一般小児科外来は45人制限ですが、普通の風邪ひきの診療と違ってアレルギーの説明をしているとひとりひとりに時間がかかり、午後の予約の外来開始までに終わらず、ずっとずれこむ、ということになります。どうして今年はこんなことになっているのか、分析してみました。
1)アレルギーの患者さんが増えているから。とくに食物アレルギーの患者さんは小学生以降だけでも、この10年で2.6%から4.5%に増えています。専門医療では、どうして食物アレルギーが起こるか、検査値のIgEはどういう意味か、どの食品をどれだけ除去すべきか、あるいはどの食品をどうやって食べていくか、という話を患者さんごとにしているとものすごーく時間がかかります。とくに、経口免疫療法といってすこしずつ食べていく方法は、いっぺんに増やしてアナフィラキシーが出ては大変ですから、増やし方を詳しく話します。
2)アトピー性皮膚炎の乳児にプロアクティブ療法をしているから。乳児のアトピー性皮膚炎は、最近では早期に治して食物アレルギーの進展を予防しようというのが専門医の流れです。赤ちゃんだからステロイドのぬり薬を使わないというのは今や時代遅れで、さささっと治してしまいましょう。TARCというアトピー性皮膚炎の重症度を示す検査値を参考にしてステロイド外用の塗り方を細かく指導します。よくなってもいきなりやめずに少しずつ減らしていくのです。そうすると、1週間後、2週間後にまた来てもらってそのあとの塗り方をまた変えるので、何回も同じ患者さんに受診してもらうことになり予約がいっぱいになります。昔は、3日塗って3日休んで、はい、2か月後、といっていたのが、プロアクティブ療法だとそうはいかなくて。でもTARCが10000を超えていた赤ちゃんが、たいてい3か月で正常になり治っていきます。
3)小学校も食物アレルギーの診断書、学校生活管理指導表の提出を求めるようになったから。以前は、小学校は、担任の先生まかせで給食から卵や乳を除去したりして、医師の診断書がなくてもいい、というところが多かったのですが、平成24年12月、東京調布市で給食の誤食で児童が死亡してから、文科省が学校のアレルギー対策に乗り出し、学校生活管理指導表を活用するようにという通達を出しています。医療機関に受診しないといけないし、診断書にお金はかかるし、でもちゃんとした根拠と具体的な除去食品を書類で提出するのは当然だと思います。それで、1年ぶりとか3年ぶりとかいう患者さんがどっと押し寄せ、検査をして説明をして、食事指導して書類を書いて、ということになります。
4)春先で、喘息発作や花粉症が多いから。季節の変わり目はアレルギーの出やすい時期です。花粉症とわかっていれば耳鼻科に受診されるでしょうが、まだ小さい子で、咳が続く原因が花粉症とわかることもあるし、RSウイルスやマイコプラズマ感染で喘息発作が続き、入院が必要なお子さんもちらほらいます。治療の説明や、なぜ発作が起きているかの分析もお話すると時間がかかります。

というわけで、先週の月、水、金、土は、朝9時前から始めた外来がぶっ続けで6時すぎまで、9時間労働で、そのあと紹介状書きなどの書類仕事もあり、連日帰宅が9時でした。さすがにくたびれていますが、そのなかでも、長いあいだアレルギーとつきあいながら高校に進学した子どもたちがいてお母さんとともに成長を喜んだり、少しずつ卵や乳製品が食べられるようになってうれしい子どもたちがいたり、あんなにひどかった喘息が何年がかりでも薬が減らせてとうとう薬なしになったり、こどものアレルギー専門医ならではの喜びとやりがいも感じさせていただいています。
もう少し、混雑する外来になると思いますが、申し訳ありません(もう一回、礼!)。よろしくご理解いただき、一緒にお子さんのアレルギーに向き合っていきましょう。

待ち時間が長いわけ

同じようにアレルギーの外来をしていても、最近は、ひとりひとりの患者さんに対応する時間が長く、予約外来でも時間がずれこんでお待たせすることが増えています。いつもすみません。でも、どうしてかなあと考えてみました。
まず、アトピー性皮膚炎です。塗り薬をポンと出して、塗っといてねーというのは簡単ですが、それでは絶対患者さんは塗ってくれません。塗り薬は、どの薬をどこにどのくらいの量、どのくらいの頻度でどれだけの期間塗るか、ということがわからないと患者さんはうまく塗ることができません。ですからその説明をし、さらに当科では、訓練された看護師がそのデモンストレーションをして、お母さんに子どもへの塗り方を指導します。それは前からやっていたことなのですが、ここ数年、TARCという検査値が、アトピー性皮膚炎の炎症の程度を現す指標として導入されました。TARCが高いと重症なので、ステロイドを塗って見た目は良くなったように見えてもまだ皮膚の中には炎症が残っていて、ステロイドを中止するとまたもとにもどってしまいます。TARCが正常化するまで、少しずつステロイドを減らしながら継続するプロアクティブ療法というのが最近の専門医の治療です。以前はステロイドを三日塗って三日休んで、はい、2か月後にまた来てね、という治療が主体でしたが、このプロアクティブ療法はしばらくステロイドを塗り続けるので、その根拠を詳しく話してお母さんに塗っていただかないといけないし、2週間、3週間先にまた塗り方を変更するのでこまめになんども外来に来ていただくことになります。これが混みあう理由のひとつかな。
それから食物アレルギーの患者さんも増えました。多くは赤ちゃんの時卵や乳・小麦のアレルギーがあっても、1歳2歳と進むと食べられるようになってきます。少しずつ安全な食べ物の増やし方があるのですが、それを細かくお話するのに時間がかかります。「卵のはいったもの、少しずつ食べてね」とひとこという医師も多いのですが、それではお母さんは、パンなのかお菓子なのか、マヨネーズなのかプリンなのか、少しずつってひとくちなのか1個なのか、わかりません。また、以前はIgE の値がぐっと低下する5-6歳まで除去をしていたのですが、アレルギーの世界では最近は早く食べたほうが早く治る、というのが定説になってきて、ますますIgE 値のまだ高い小さな子に食べさせるようになってきました。それだけリスクがありますので、細かい食べ方の指導や増やし方、症状が出た時の対応を話すのに時間がかかってしまいます。
これらの患者さんには1人に10-15分のお話が必要なのに1時間8-10人で予約を組んでいますのでなかなか時間通りに進んでいかないことが多く、さらに今の季節は意見書・診断書・生活管理指導表も書かねばなりません。ひとつ身でどう効率よくしかも患者さんに満足してもらえる診療をするか、模索中です。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

Copyright © KAMESAKI Kodomo・Allergy CLINIC All Rights Reserved.