赤ちゃんの湿疹は早く治す!

湿疹とは皮膚の炎症なので、炎症を抑える薬を塗ってよくする、それは病因と治療という意味で医学的に正しい治療なのです。大人の湿疹には適切なステロイド軟膏が処方され、短期で治っていきます。しかし長い間、赤ちゃんの湿疹は、「乳児湿疹」という名前で、赤ちゃんだからできる湿疹なので時期が来れば治る、とステロイドの塗り薬が治療に使われませんでした。ワセリンだけ塗って、よくなる赤ちゃんはいいのですが、どんどん湿疹が悪化し、赤ちゃんは掻きまくり、全身真っ赤になって汁も出て、痒みで眠れないという状態になって、6~12か月で入院になる赤ちゃんを、10年以上前病院にいたころたくさん担当しました。入院してしっかり薬を塗ったら皮膚はよくなるのですが、検査では卵乳小麦などいろんな食品にIgE抗体(アレルギーの抗体)をもっていて、離乳食は卵乳小麦除去で長らく食べられない、といことがよくありました。
先日17歳の高校生が受診され、お母さん曰く、小さいころ乳児湿疹で、大きくなったら治りますよと言われましたが、治りませんでしたねえと。もちろんこれはアトピー性皮膚炎で、今も、肘、膝、首元には湿疹があり、何より長年患ってきた証拠に湿疹の痕が残っています。
最近では、乳児であっても湿疹は積極的に治す、ということになっています。2か月以上痒みのある湿疹が続くとアトピー性皮膚炎と診断されます。アトピー性皮膚炎があると、そのあと喘息になるリスクは2~3倍、食物アレルギーは6倍にもなるのです。確かに湿疹の程度は、小学生くらいになると軽くはなります。今でも、自然に治るからステロイドなんか使わずがんばれ頑張れと患者さんを励まし続けるのが医者の仕事だと思っている小児科医がいます。しかし乳児期からの湿疹を放置すると以下のことが問題になります。(1)慢性の炎症により、皮膚はごわごわし(苔癬化といいます)、湿疹や掻き傷のあとが皮膚に残ります。こういう皮膚をもって思春期を迎える子どもたちの気持ちをどうしたらいいでしょう。(2)これははっきり証明されているのですが、湿疹があると皮膚のバリア機能が低下して、身の回りにあるいろんなアレルゲン(食物も環境物質も)が皮膚から入ってIgE 抗体を作ってしまいます(これを感作といいます)。感作されたからといって卵や乳を食べられないわけではないのですが、アレルギー反応がでるかもしれないので、やめときましょう、といわれて食べないでいるとそのうち本当の食物アレルギーになっていきます。ですから学会は最近、乳児でもしっかり皮膚をよくして、逆に卵も乳も早くから与えようと提言を出しています。20年前とはまったく違ってきているのです。(3)湿疹が続くと痒みが持続し、不愉快です。夜寝ると温まって痒みが増し、ぐっすり眠れず、朝もすっきり起きず日中も眠くて不機嫌で、遊びにも集中できません。皮膚をよくせずに何年も湿疹を持っていると、子どもの成長に及ぼす影響は量りしれません。子どもは夜中ぐっすり寝て、昼間はしっかり遊んで楽しく過ごしていろんなことに興味を持つのです。たかが皮膚のかゆみで、貴重な子どもの時間を無駄にしていいのでしょうか。
最近は2~3か月から赤ちゃんの湿疹を早く治すと、アトピー性皮膚炎にならずに、食物アレルギーにもならずに普通に育っていくことが多いです。20年前とはずいぶん変わりました。赤ちゃんとご家族には楽しく機嫌よく暮らしてほしいです。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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