咳はとめなきゃいけない?

子どもがかぜをひくと、熱、鼻水、咳というのが主な症状です。

熱は、病原体が体に侵入したときに起こる生体側の反応です。体温を上げてウイルスが増殖しにくい状態にしているのです。ウイルスの種類によって熱の高さや経過、持続はさまざまです。アデノウイルスは、上がったり下がったりのギザギザの熱が3-5日続きますし、インフルエンザは、ワクチンもしておらず抗インフルエンザ薬を飲まなければ、普通39度前後の熱が3日から5日続き、倦怠感が強いです。突発性発疹症は、いきなり39-40度の熱がまる3日続いて、すとんと下がると同時に体中に発疹が出始めます。私が皆さんに、熱を測って熱型表をつけてね、とお願いするのは、すごく診断の役にたつからです。

咳も皆さん心配されますが、咳を止めるのではなく、咳がどうして出ているかが子どもの場合問題です。2歳未満の乳幼児で鼻水があって、ごろごろいう咳がある場合、多くは鼻水がかめなくて、鼻の奥からのどに垂れて、それを出そうとして咳をするのです。なので、鼻の奥にたまった鼻水を吸引して、鼻水をへらし痰がからまないようにするのです。最近流行しているのはのどにつくウイルスで、けんけん、こんこんとかわいた咳をします。胸の音はきれいです。のどについた病原体を出そうとして咳をするので、のどの炎症を抑える薬を出します。

私は気管支喘息を専門にやっているので、胸の音を一生懸命聞きます。喘息では気管支の粘膜に炎症があり、発作時には気管支が収縮して痰がからんで、ぜいぜいと喘鳴(ぜんめい)が聞こえ、空気が肺に入りにくくなるのです。気管支の中の痰を出そうとして、湿った咳をします。こういうときに、風邪薬の咳止め(アスベリン、メジコンなど)を服用すると、咳がとまって痰がつまって発作が悪化します。気管支拡張剤を吸入したり飲んだりして気管支を広げて痰を出してやらねばならないのです。小児の気管支喘息のガイドラインにはちゃんと、「喘息発作時に鎮咳剤は禁忌」と書いてあるのですが、耳鼻科の先生、内科の先生、小児科でもガイドラインを知らない年配の先生などはよく咳止めを処方されます。

そもそも咳は、何か体にわるいものを出そうとする反射なので、止めなければならない咳というのは小児ではめったにありません。今はもうあまり見ませんが百日咳のしつこい咳とか、喘息がないとはっきりわかっている年長児のしつこい咽頭炎の咳には、咳止めの薬も出してもいいかと思いますが。

熱型を見て、のどを見て、胸の音を聞いて、総合的に何が起こっているかを判断し処置をし薬を出す、毎日これが小児科医稼業です。結構続いて忙しいですが、がんばります。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

Copyright © KAMESAKI Kodomo・Allergy CLINIC All Rights Reserved.