今月の独り言
アレルギー最先端事情
先週の週末は、宇都宮で小児アレルギー学会でした。
子どものアレルギーの病気は増えているので、専門医でなく、一般の小児科の先生や開業医の先生もたくさん勉強に来ています。今回私なりに重要と思ったトピックスは、
1)小児気管支喘息のガイドラインが5年ぶりに改訂されました。ガイドラインというのは、最近いろんな医学分野・病気について出されています。その分野に専門でない医師でも、病気の重症度によってその病気をこんな治療で治していきましょうという基本的な治療のしかたが書かれているのです。今回は、乳児喘息といって赤ちゃんの喘息を特別に分けていたのを、乳幼児喘息として、5歳以下をまとめて考えましょうとか、その子どもたちの発作の時の吸入の薬の量をこのくらいにしましょうとか、いろんな変更がありました。最近寒くなって風邪が増えたせいか、喘息の発作が多く、喘息の治療をちゃんとしたいといってこられる初診の患者さんも増えています。
2)アレルギーの治療は、アレルゲンを避ける(食べ物なら除去する、ダニなら掃除するなど)、アレルギー反応を抑える薬を使用する、というのが主だったのですが、いずれも根本的な解決になりません。それで、最近は「免疫療法」が盛んになってきました。これは、アレルゲンを少しずつ体内に入れて、慣らしていく、耐性をつける、という考え方です。子どもの食物アレルギーが、食べていくうちにだんだんよくなることは昔からわかっていましたが、食物を少しずつ計画的に食べてならしていくのを「経口免疫療法」といいます。食べていくことで食べられるようになるのです。昨今増えてきたスギの花粉症を治すために、スギのアレルゲンの入った液体や錠剤を毎日口に含んで慣らしていくのを「舌下免疫療法」といって、現在は12歳以上しか使えないし長期間続けなければなりませんが、効果はかなりいいようで、症状は軽くなるし、薬をずいぶん減らせます。ダニのアレルゲンを皮下に注射して慣らしていく「経皮免疫療法」というのもあります。日本ではずいぶん遅れているのですが、これから免疫療法は増えていくと思われます。
3)この数年いろんな研究がされてわかってきたことは、赤ちゃんに多い食物アレルギーは多くは皮膚の湿疹があることで感作(アレルギーの抗体が体内にできること)が起こる、ということ。ですから、乳児期早期の赤ちゃんの湿疹はステロイドを使ってでも短期間によくすると、食物アレルギーにならないのです。もうひとつは、早く食べさせたほうが食物アレルギーは起こりにくいということです。昔のように湿疹があるから、あるいは卵アレルギーの抗体があるから卵はやめておきましょう、というのではなく、少しずつでいいから早くから卵をたべさせたほうがいいと、学会でも提言を出しているのです。
アレルギーの研究や治療はどんどん進んで変わってきています。うちはアレルギー専門医療を行うクリニックなので、医師も看護師も最先端の医療を勉強して実践し、患者さんのお役にたちたいと思っています。