湿疹を治していろいろ食べよう

先週、岡山で日本小児アレルギー学会総会があり、土曜日を休診して出席してきました。最近の小児アレルギーは、食物アレルギーの診断、治療についてや、皮膚からアレルギーが進む(経皮感作)という話が中心です。
昔は、赤ちゃんの顔にある湿疹は、乳児湿疹といって、赤ちゃんだからとかそのうち治るからとかいって、治療をせず放置していたものですが、そのうちその皮膚からいろんなアレルゲンが体に入って、アレルギー体質をもつ赤ちゃんにはそのアレルゲンに対するIgE抗体ができてしまいます。抗体を持っていると、初めて食べた卵やピーナツでアレルギー症状を起こしてしまうのです。赤ちゃんでも、局所であっても、早くステロイド軟膏を使って治しておかないと、バリア機能が低下して、どんどんアレルギーが進んでしまうのです。以前は湿疹があると離乳食を遅らせましょうとか、卵は1歳までやめておきましょうと言っていたものですが、逆に早く少しずつ食べさせたほうが食物アレルギーが予防できることもわかってきました。いろんな研究で証明されたのです。今では学会は、「アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは早く湿疹を治して、卵アレルギーの発症を予防するために6か月から微量の卵摂取を勧める」という提言を出しています。この時の卵はよく加熱してあることが必要です。赤ちゃんに食べさせやすく手軽なのでよく卵ぼうろを勧める先生がいるのですが、卵ぼうろは主成分のでんぷんが火の通りが悪いので、しばしばアレルギー症状を起こします。それですごく怖がってしまうお母さんがいるのですが、それは選択した食品が不適当なのです。
私が座長をした一般演題のセッションでも、ジャガイモでアナフィラキシーをおこした6歳児の報告がありました。いろんな食物アレルギーを合併している中にジャガイモもある、という患者さんはいるのですが、そういう人はアナフィラキシーを起こすことは少ないし、少しずつ食べられるようになることが多いのですが、この報告例は違いました。乳児期からアトピー性皮膚炎がひどく、母親がステロイド軟膏を拒否して湿疹が何年も続いていたのです。1歳までにジャガイモは食べていたのですが、1歳から保育園に行き始めてジャガイモを食べてアレルギー症状が出るようになりました。ジャガイモのIgEもどんどん上がっていきました。あとから分かったのですが保育園の粘土が、小麦アレルギーの防止のために、片栗粉(ジャガイモの粉)を使っていたのです。湿疹を治さない傷だらけの指でジャガイモを触り続けた結果経皮感作でジャガイモアレルギーになったと考えられ、負荷試験でちょっとのジャガイモでもアナフィラキシーを起こしてしまうほど重症になってしまいました。6歳になって後悔してもあとの祭りです。
これから、皮膚をどんどんよくして、いろんなものを早く食べるようにすれば、いったん増えた食物アレルギーの患者さんも、10年後には減ってくるのではないでしょうか。それまで私がずっと診療をしてられるかどうかはわからないけど。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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