本当に発熱か

体温は、年齢によっても、時刻によっても、測り方によっても、個人によっても違います。一般に、年齢が低いほど体温は高く、平熱は朝低く午後から高くなります。わきの下か耳の中か、水銀体温計か電子体温計かによっても異なりますし、個人差も大きいので、日頃からお子さんの平熱を知っておいてください。

一般には、わきの下で測って37.5℃以上、あるいは平熱より1℃以上高いときを発熱とします。

熱が続く時には以下の熱型表に記録をしてお持ちください。

病状の記録
発熱表(PDF)をダウンロード

熱の原因

子どもはとくに生後6ヶ月から3歳くらいまでは、よく発熱します。子どもの発熱はほとんどが感染症つまり病原体の侵入によるもので、それも細菌とウイルスでは、圧倒的にウイルスが多いのです。病原体が侵入すると、それに対抗しようとしてからだの免疫反応がおこります。発熱物質がつくられるのもそのひとつで、熱はいわばからだが戦っているあかしでもあります。熱自体はあまり問題がなく、高熱が続いてもそれだけで頭がおかしくなることはありません。熱の原因と、熱以外の症状がむしろ重要です。

咳や鼻水、のどの痛みなどは急性鼻炎、咽頭炎、扁桃炎などいわゆるかぜ(感冒)の症状ですが、よく熱も出ます。咳がひどくなり、痰が出て、呼吸が苦しいと気管支炎や肺炎になっていることがあり、熱も続くことが多いです。尿路感染症では熱とともに排尿時の痛みや腹痛など、急性胃腸炎では嘔吐、下痢、腹痛が三大症状です。どこに病原体が感染するかによって熱にともなう症状が違います。

その他ウイルスによる感染症で発熱が有名なのは、

  • 突発性発疹

    0~1歳の乳幼児に多い。あまりほかの症状はなく、いきなり39~40℃の発熱が3日間続き、熱が下がるとはでな発疹が全身に出ます。ほとんどは問題なく治りますが、高熱が続くので熱性けいれんをおこすことがあります。

  • 麻疹(はしか)

    発熱とともに咳、鼻水、目やにが2〜3日続きこの時期はひどいかぜとみわけがつきません。いったん熱が下がったあとに高熱となり、全身に発疹がでて4~5日続きます。全経過10日くらい、とってもしんどい病気ですし、なにより合併症がこわいです。肺炎、中耳炎は珍しくないし、まれではありますが脳炎になると致命的です。私は医者になって最初の10年ではしかで亡くなった患者さんを3人診ました。今は予防接種で防げますので、1歳になったらすぐに受けてください。この20年は麻疹の子を診たことがありません。

  • 水痘(みずぼうそう)

    水をもった疹が全身に出ます。軽くすめば発疹も少ないし熱がないこともありますが、重症では高熱が3日くらい続くし、全身びっしり発疹が出ます。発疹がみんなかさぶたをつくるまで感染力があるので1週間くらい外に出れません。平成26年10月から定期予防接種となりました。

  • アデノウイルス

    夏に流行するプール熱(咽頭結膜熱)の原因ウイルスです。のどが真っ赤に腫れて高熱が4~5日続きます。目が赤くなり結膜炎をおこしたり、頭痛や吐き気、下痢、高熱による消耗症状もおこります。実は夏だけでなく1年中発症し、ときに重症の肺炎もおこします。

  • ヘルパンギーナ

    夏風邪の一種で、発熱とのどがまっかになって水疱(ぶつぶつ)ができます。熱は2~3日ですがのどが痛くて食べられないこともあります。原因はエンテロウイルスやコクサッキーウイルス。水分補給に気をつけましょう。

  • 溶連菌感染症

    溶連菌という細菌がのどについておもに扁桃炎をおこします。発熱、のどの痛み、ときに発疹が出ます。のどは真っ赤で白いぶつぶつがついて、舌が苺のように赤くざらざらになります。流行性があり、学校は出席停止になります。 抗生剤を10~14日飲むことが必要。昔はこの感染のあとに急性腎炎をおこすことが多かったので、感染後2~3週間して検尿をお勧めしています。

  • インフルエンザ

    ごぞんじ冬になると流行するウイルスですが、咳、鼻水、のどの痛み、発熱、胃腸炎と、症状はふつうのかぜと同じですが、重症感が違います。とにかくしんどい、ぐったりとなることが多く、熱も高熱で始まり、すっかり下がるのに1週間かかります。肺炎や脳炎といった合併症もあります。

    A型とB型とがあり、今は迅速診断キットが普及して早く診断することができますし、発症48時間以内であれば効果のある抗ウイルス剤もありますので、あやしかったら医療機関へ。伝染力が強いので、幼稚園や学校、職場では次々にうつって病気になっていきます。手洗い、うがいは有効。それから予防接種は、感染予防におすすめしていますが、かかっても軽くすむ効果があります。

  • RSウイルス感染症

    風邪のウイルスの一つですが、乳児とくに6ヶ月以下の子がかかると、重症の肺炎や呼吸障害が起こることがあります。大きな子や大人がかかると普通のかぜなのですが、乳児では鼻水、咳、ぜいぜい、呼吸困難、食欲低下などが起こり、入院が必要なこともあります。2歳までにほとんど100%の子がかかりますが、保育所などで流行し、毎年かかることもあります。喘息のある子がかかると発作になることもあるので流行時は要注意です。

  • 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

    耳の下がはれておたふく顔になってしまいます。耳下腺という唾液腺にウイルスが入っておこります。片方のこともあるし両方腫れることもあり、腫れているときは痛いし、熱が出ることもあります。ときに髄膜炎を合併しますので、頭痛や嘔吐があれば要注意です。まれに膵臓炎や睾丸炎をおこすこともあるし、最近では後遺症として聴力低下が多いことがわかってきました。任意ですが、予防接種をおすすめしています。

感染症以外にも熱を出す病気はいろいろあります。

川崎病は、いまだ原因不明ですが、子どもにおこる発熱疾患です。高熱が続き、発疹が出て、目が赤くなり、唇や舌が真っ赤になり、手足が腫れ、首のリンパ節が腫れます。全身の血管炎がおこり、とくに心臓の血管に炎症がおこると動脈瘤ができて重症になります。最近は早く診断して治療することでずいぶん治療成績が上がってきました。1~3週間の入院が必要です。

そのほかにも、熱中症脱水でも発熱しますし、リウマチ熱関節リウマチ白血病などでも長期に熱が続きます。こういう病気は熱だけでなく必ずほかの症状があります。

発熱は、熱があることよりも、その原因が問題なのです。多くの感染症は、自分の免疫力で病原体と戦って時期がくれば治っていきます。そうならずに合併症などをおこしてこじれる場合には治療が必要です。

発熱時の注意点

熱以外の症状に気をつけて受診時はそれを伝えてください。熱はいつからあるのか、何℃くらいか、どう変化しているか、そのほかの症状は何か、水分摂取や食欲はどうか、まわりで流行している病気はあるか。こういうことを聞きながら診察していくと、小児科医は探偵のようです。だいたい見当がつくと、見通しもたちます。 原因がわかれば熱はあっても大丈夫、時期がくれば下がります。熱型表をつけていただくと、感染の原因がわかることもあるので受診時に見せてください。

たいていの感染症は3日以内に熱が下がりますので、原因が特定できなくてもそのくらいは経過をみることになります。熱があっても、水分がとれて、夜まあまあ眠れて、昼間遊んでいるようなら大丈夫。大人で39℃あればぐったりですが、子どもでは走り回っている子もいます。

ただ、基本は安静。外出はひかえてゆっくり休ませましょう。嫌がらなければ氷枕やアイスノンで冷やしてあげてください。部屋の温度湿度は気をつけて、冬場であれば空気が乾燥しないようにしてください。水分補給は十分してください。何でもかまわないのですが、下痢や嘔気があるときはイオン飲料で電解質の補給ができます。赤ちゃんであれば、母乳やミルクでかまいません。食欲がなければ無理に食べなくてもいいのです。3日くらいは水分だけでも大丈夫です。汗をかくので着せすぎず、こまめに着替えさせてくださいね。

どの時点で問題になるか

熱が出たからといって大慌てで夜間救急に行く必要はありません。多くの発熱は1~2日で下がることが多いし、熱の出始めは病気の診断もつきにくいのです。熱だけでほかに症状がなければ、診た医者も出す薬がありません。混みあった救急外来で待っているあいだにほかの病気をもらうかもしれないし、そんなところで待っているより家で暖かくしてゆっくり寝ているほうがからだにずっといいこともあります。3日以上続く熱や、ほかの症状(咳や下痢や腹痛など)がひどければ受診してください。

前にも述べたように経過がわかっている病気であれば熱の続く日数がだいたい決まっています。予定よりながびく発熱は合併症をおこしている可能性があります。それから、熱だけでも小さい赤ちゃんや栄養のよくないお子さんはすぐ脱水になったり体力を消耗してしまいます。からだがもちそうになかったら早めに受診して点滴など受ける必要があります。

また、熱があっても元気ならいいのですが、ぐったりしていたり、ずっと機嫌が悪い、顔色が悪い、水分がとれないというときは受診してください。咳で眠れない、下痢・嘔吐が続く、けいれんをおこし10分以上続くまたは繰り返す場合も受診が必要です。

また、6ヶ月以内の赤ちゃんは熱を出さないものです。6ヶ月以内で38℃以上の発熱が続くときは小児科医に診てもらってくださいね。

解熱剤

熱はからだの防衛反応でおこっているので、無理に下げる必要はありません。ただ、高熱が続いて消耗が激しく、水分が取れない、眠れないなど心配なときは解熱剤を使ってもかまいません。子どもに使える解熱剤は決まっていますので必ず名前と使う量や使いかたを確認してください。飲み薬と坐薬があります。インフルエンザのときには使える解熱剤は決まっていてそれ以外のものを使うと脳症の発症が多くなることがわかっています。

熱だけで脳に障害がおこることはありません。脳や神経に炎症がおこると脳障害がおこることがありますが、そのときは嘔気、けいれん、意識障害など神経症状がありますので、すぐ受診しましょう。

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