今月の独り言
ペクチンアレルギー
今年の2月は寒かったり春のように暖かかったり、季節の変化が激しいですね。
ウイルスの流行は、本来は気温によって変化するものでした。例えばインフルエンザウイルスは低温・乾燥で増殖しやすいので、寒くなってくると流行が始まり、春には終息する。手足口病やアデノウイルスは逆に夏の感染症のイメージでした。そしてある程度流行すると抗体保有者が増えて、次の感染を集団的に予防できると。しかし2020年からコロナの感染で人々が引きこもるようになり、自然な季節の変化によるウイルスの増減がなくなり、病気の流行がなくなり、抗体もできなくなり、その反動で翌年は大流行になったりともうめちゃくちゃ。まったく予想がつかなくなりました。
この2月はインフルエンザBが流行中で、溶連菌もまた増えています。ウイルスと違って抗体ができないので、溶連菌の感染を繰り返す人も多くなっています。実際の現場では、患者さんの症状と熱型と診察所見で、必要な検査をして診断をつけていきます。まあ、なんの検査もしないような診療所もあるみたいですが、私は医者として自分が納得して患者さんに説明して安心してほしいので、検査をして処方をします。もし診断されなくて放っておいても、インフルエンザもコロナもアデノも溶連菌も、ひどい合併症になる確率は少ないのですが、インフルや溶連菌は薬があるし、アデノやコロナも病気の見通しを話すと患者さんも安心するかなあと思います。幸い今のところ、入院を勧めるような患者さんはほとんどなくすんでいます。
先日、紹介で来た10歳の男の子、もともとカシューナッツのアレルギーがあるのですが、お菓子と金柑を食べてアナフィラキシーになりました。お菓子にカシューナッツが混じっていたのかと考えましたが、文献を調べると、カシューナッツアレルギーにペクチンアレルギーが合併することがあると報告がありました。ペクチンとは、植物に含まれる多糖体で、かんきつ類やリンゴの皮の内側にありますが、ジャムやスムージーなどとろみをつけるのに使われています。血液検査では検査項目がありません。そこで、プリックTOプリックテストといって、怪しい物質そのものを皮膚にのせてひっかいて反応を見る検査をすると、金柑の皮の内側の部分と、市販のペクチンの粉を溶かしたもので強陽性が出て、ペクチンアレルギーが診断できました。最近は、変わった食物アレルギーが増えています。やれやれ、わかってよかった。
3月は、この春はどうなりますか。暖かくなり、花々も咲き、日差しも降り注いで、心が晴れるといいなあ。