感作イコールアレルギーではない!という話

アレルギーの病気は、IgEというたんぱく質がカギを握っています。何かが体のなかに入ってくると、アレルギー体質のひとは、敏感にそれを感じて、それに対抗する抗体という物質を作ります。普通の、細菌やウイルスに対抗する抗体はIgGやIgMといって体を守るほうに働きますが、アレルギーの抗体はIgEといって、食べ物やほこりや花粉など、身近なものに作るので、それによってかゆみや鼻炎やぜんそくが出るので困りものです。
IgE を作って持っていることを「感作されている」といいますが、アレルギーの病気の難しいところは、感作されているからと言って病気とは限らないことです。花粉に感作されていても鼻炎の症状がないひともいますし、多いのは、食物に感作されていても別に食べても症状がない、つまりそれの食物アレルギーとは限らないのです。
食物アレルギーの考え方は、この10年でずいぶん変わりました。昔は、アトピー性皮膚炎の患者さんがある食物に感作されていると、その食物アレルギーだということで食物除去をしていました。でも最近わかってきたのは、食べていないと本当に食べて症状の出る食物アレルギーになっていく、食べさせたほうが食物アレルギーは発症しない、またアトピー性皮膚炎は食物のせいでおこるのではなく、皮膚に湿疹が続いてバリア機能が悪いために皮膚からいろんなものの感作が起こる、ということです。世界中でそういうデータがつみかさねられてきました。専門医は、関連の学会や研究会に参加していると、そういう話を聞きますから論文を読んで勉強して、自分の診療も変えていかねばなりません。
最近初診の患者さんで、食べていた卵を、感作されているからといって除去するように医師に指示され、何年も完全除去をしてきた子がいました。脱ステロイドといって湿疹を治す治療はいっこもしない皮膚科でわずかに感作されているからと5歳にもなるのに卵と小麦の完全除去を指導されている子もきました。
赤ちゃんのときに本当の食物アレルギーで症状があっても、成長とともに治っていくことがほとんどです。私たちアレルギー専門医の仕事は、本当になおりにくい食物アレルギーの患者さんに、負荷試験をして、安全に食べられるような食べ方の指導をすることです。
お願いだから、食物アレルギーでもないのに、食物除去を安易に指示しないでほしいなあ!安易な「やめておきましょう」を言うのは簡単だけど、あとで大変なのは患者さんと家族なんですから。食べられるようになるまでちゃんと責任もって指導してほしい、なんていっても無理か。
今の最新の治療は、「さっさと皮膚をつるつるにして、なんでも早くから食べる!」なのです。アレルギー科と看板がかかっていても、専門医でないことが多いですから、治療や指導に疑問があったらよくその先生に質問してくださいね。

夏風邪に負けるな!

梅雨空がすっきりしません。季節はもう夏です。
小児科の外来は、この1か月夏風邪が増えています。特に手足口病が多いです。今年の手足口病は手のひら足の裏だけでなく、うでにもふとももにもぶつぶつが広がり、それが茶色いかさぶたになってなかなか派手な病気です。これは数年前からですが、手足口病もウイルスが進化(?)しているのかも。
夏風邪は、ウイルスによる流行性感冒ですが、ウイルスの種類によって症状が異なり、名前がいろいろです。のどだけ真っ赤でぶつぶつがあって高熱が出るのはヘルパンギーナ。そうかと思っていると手足に水ぶくれのようなぶつぶつが増えると手足口病。熱に加えて目が真っ赤になって結膜炎をおこすものはプールで感染することからプール熱。昔からの病名ですが、原因ウイルスがはっきりすれば、なんとかウイルス感染症といったほうがいいかもしれません。
夏のウイルスは、高熱を起こすものが多いです。39-40℃が少なくとも1~3日。アデノウイルスでは5日から1週間続きます。朝は下がって夜に上がる、というぎざぎざの熱型になることが多いです。熱はしんどいですが、ほかに症状がなく、子どもは比較的元気です。我々小児科医は、症状が続くと、必ず、合併症はないか、ほかに悪い病気ではないかと考え、診察をし、いろんな検査をしますが、ほんとにしつこい夏風邪は、熱だけで1週間続いたりします。大丈夫だと思っていても何か見落としはないかと心配で、気をつけることをお母さんにお話しして、こういう症状があればまた来てね、こうなったら夜でも救急に行ってね、と言います。ウイルス感染は時々、突然悪化する心筋炎、脳炎など合併症があるので油断がならないのです。
熱が数日続いても、食欲があって、遊んでいて、眠れていれば大丈夫。熱の記録をつけて、3日以上続くか、心配な症状があれば受診してくださいね。

アレルギー教室始めます!

アレルギーの病気の治療をするには、患者さん自身、子どもの場合には保護者の理解と協力が必要です。医者が出した何かの薬を毎日飲みさえすれば病気が消える、というものではありません。特にアレルギーの病気は体質に基づく慢性疾患なので、薬だけでなく生活習慣や衣食住の生活環境にも気をつけなければならないし、長期におつきあいしなければなりません。それには、どうして病気が起こるのか、何が悪化させるのか、それを避けるにはどうしたらいいのか、という知識が必要です。
当科はアレルギー専門の小児科ですから、初めて来院された患者さんには時間をかけてお話しすることにしています。どうして今こういう症状が起きているのか、どうすれば治っていくのか、そのためにどう環境の調整をするのか、薬をどう使うのか。いろいろお話すると、初めて聞いた方が多く、「目から鱗!」というお母さんもよくいらっしゃいます。ただ、ひとりひとりの患者さんに割ける時間は限られていますので、私たちはよく集団指導、というのを利用します。患者さんに何人か集まっていただいて、お話をするのです。
当クリニックでも、10月から「アレルギー教室」を始めることになりました。アレルギー専門の病院ではたいていどこも、患者さん向けに教室や勉強会を開いており、前にいた済生会中津病院でも20年前に、末廣豊先生と私で教室を始めました。患者さんやお母さん方から好評で、11年前クリニックを開業した時も最初は教室をしていたのですが、医師ひとりで診療が忙しくなると大変になって、時々になり、ここ数年はまったく開いていません。
昨年海老島先生が仲間になってくれて、看護師さんも増え、特にアレルギーエデュケーターといってアレルギー専門の医療者の資格をもった看護師も来てくれました。患者さんも増えていますし、熱心なお母さんお父さんも多いので、また教室を始めることになりました。病気はなぜ起こるのか、治療はどうするのかを中心に詳しいお話をして、あとは患者さんからのどんな質問にも答えます、のコーナーになります。気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーについてそれぞれ計画していますので、夏ごろには皆様にお知らせできると思います。どうぞご期待ください。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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