7月のぜんそく

気管支喘息はいろんなきっかけで発作が起きます。子どもは、風邪をきっかけに発作が起こることが多いのですが、そのほかにも季節の変わり目、台風などの気圧の変化、冷たい空気を吸い込むこと、運動など、いろんな原因があります。本来7月は発作の少ない季節なのですが、今年は大雨があったり猛暑だったり台風がきたりなど気候がおかしいのか、なんだか発作を起こすウイルスが流行っているのか、発作で受診する患者さんが多いです。
7月は9人の患者さんが、ウチから紹介入院したのですが、皆呼吸器がらみ。10か月から4歳までの小さい子ばかりです。純粋な肺炎は2人だけで、7人には喘息があります。喘息に肺炎を合併したのが3人。なかには、初めて受診された喘息で、ちゃんとした予防治療がされておらず、発作がひどくて入院になった子が2人いました。
7月28-29日と福岡で日本小児臨床アレルギー学会があり、35年前この会の前身である難治喘息研究会を始めた大先輩の先生方の話を聞きました。ステロイド吸入のなかった時代、ほんとに子どもの喘息の重症はひどかった。夜に眠れず起き上がって空気が入らない息をして発作に苦しむ子がたくさんいて、重症な子たちは、施設入院療法といって、親元を離れて病院で生活し学校に通っていたのです。われわれより年上の小児科医はたいていひとりかふたりは患者さんを喘息で亡くしています。たとえば1970年には20歳未満で喘息死した人は740人もいました。2010年以降は喘息でなくなる子どもは0から数人になっています。
昔は喘息の子たちは発作で学校を休み、体育は見学し、運動会や遠足は行けず、という生活でした。今はちゃんと長期管理をして、学校や幼稚園も休まず、好きな運動をして思いっきり遊ぶ、当たり前の生活ができます。皆さん、夏休みもいっぱいあそんでね。
追記:7月30日の外来では、クループと、喘息+RS肺炎の患者さん二人が入院になり、7月の入院数は11人になりました。夏なのにRSウイルスが流行しており、0-1歳で熱が続き咳がだんだんひどくなる時は要注意です。

テレビドラマの医者になりたい?

最近テレビのドラマでは医療ものがはやりで、よくヒットするのだそうです。シリーズ化されてるのも多いですよね。私は、噂を聞いてときどき見ることもあるのですが、やはり見ると自分の知ってる医者の生活からするとリアリティがなくて、ちょっとしらけて、こんなんないよなーと思って、ずっと見続けることはないです。でも一般の方からすれば、医療ってこうあってほしいみたいなのがあって逆に人気なのでしょうね。
「私、失敗しないんで」というのが決め言葉のフリーランス外科医の美人女医のドラマは確かにおもしろい。かっこいいし、失敗しない、というのは医者に限らず人間の理想なのでこれほど受けるんでしょうね。しかし人間は失敗するものです。だからこそ慎重に、考えられるすべての準備をして医者は診療にあたるのです。外科医は病気のもとを切除してよくするという効果が目に見える治療をします。しかし手術はひとりではできず、必ずチームで行いますので、誰か突出した外科医がどこででも好きに手術する、というのは通常あまりないことです。チーム内の協力が欠かせないのです。優秀な外科医ほど、難しい手術の前には患者さんのデータを分析し、手術の方法をいくつか挙げ、何かアクシデントがあったときの対応をいくつも備えておきます。それは実際の手術時間の何倍もかかるのです。私なら失敗しないと豪語する医者より、黙って手術準備を完璧にする医者に手術してほしいなあ。
それからドラマでおかしいのは、大きな会議室でまるで株主総会みたいなカンファレンスを行ったりみんなで手術を鑑賞していることです。おいおい、みんな仕事あるだろう、病棟も外来も患者さんがいるのに、何してんだよーとつっこみをいれたくなります。
まあ、楽しみとしてのドラマなので目くじらたてることなく楽しんでいただければいいんでしょうが。あ、それと、どのドラマも若い美男美女、売れてる俳優さんを起用するのでそういう医者や看護師が活躍していますが、まあ、現場はベテランがしきりますので。統率する医師は禿げたり白髪だったりのおじちゃんが多いし、看護師長や主任もでーんとしたおばちゃんが多いです。若い奴はまだ下っ端。
現実、安心な治療は若いかっこいい美男美女という見かけではなく、経験の基づいた医師看護師のちゃんとした説明や指導や治療だと患者さんはわかっていただいていると思います。中身の充実が大切!

腸内細菌って?

最近(さいきん)、腸内細菌(さいきん)が注目されています。人間のからだにはあちこちに細菌が住んでいて、鼻やのどの粘膜にも皮膚の上にもいるんだけど、70%はなんと腸の中にいるのです。大人の腸の中には約1000種類、100兆個の細菌がいるんですって!細菌は、ばいきんともいうみたいに、病気の原因になって悪いもの(病原菌)というイメージが強いけれど、いい腸内細菌は、栄養やエネルギーを作るのに役立っていたり、病原菌の繁殖を抑え、腸管の免疫(体を守る力)に重要な役割を果たしているのです。
赤ちゃんは出産のとき産道を通ることで、ビフィドバクテリウム、バクテロイデス、ラクトバチルスなどを獲得し、これは免疫の成熟に有用な腸内細菌です。帝王切開で生まれた子は腸内細菌の種類がかなり違っていて、メタボリック症候群や免疫関連疾患の発症頻度が高いのはそのせいだという報告が増えています。また、母乳育児ではいい腸内細菌が増えるほうに傾きます。
腸内細菌叢の異常に対してプロバイオティックスの効果が注目されています。今、いろんな製品が出ていますよね。乳酸菌を強調したヨーグルトとかサプリとか。アレルギー疾患に対する治療や予防に対する研究がいろいろされていますが、まだ確実なものはないようです。どういう背景のある人たちに、どの細菌をどのくらいの量、どれだけの期間与えて、どう評価するかというのが計画しにくいタイプの研究だからですが、小児のアレルギー疾患発症予防に効果が期待されています。
抗生剤は病原菌に対しては有効な治療ですが、不必要な抗生剤の投与は、耐性菌を増やすだけでなく、腸内細菌叢を乱して免疫に影響をあたえる可能性があります。こどもの感染症の9割以上はウイルスで、抗生剤は無効です。小児の感染症のガイドラインでは抗生剤はちゃんとした必要性を確認して使うことが勧められています。私もほんとうにこの10年、外来で抗生剤を出さなくなりましたねえ。

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