今月の独り言
発熱外来
新型コロナは、変異株への変化もあって、関西で危険な状況です。毎日1000人以上の発症があれば、それはもう入院するベッドもないし、重症化しても受け入れる病院もなく、もう医療崩壊が始まっています。
子どもたちの間でも、4月から新学期で、保育園・幼稚園でいろんな病気が流行し、熱が出る子も増えています。感染性の胃腸炎やRS ウイルスなども多いです。ちゃんと見極めて正しい診断をし、できる検査はして、注意点をお話しし、何日か経過観察、どうなれば再来してもらうかなどを短時間で判断せねばなりません。いつもの病気ならいいのですが、こんなにコロナ感染が多くなり、身近な学校や園で発症者が出ていると、どこで紛れ込んでくるかわかりません。専門家の話を聞きましたが、診察だけでは、ほかの病気とコロナと区別はつかないのです。そこで、万一のことを考え、発熱二日以上続く患者さんは、発熱外来の時間帯を決め、特別室で防護体制をしっかりとったうえで対応することになりました。どうぞご協力ください。医師も看護師も、動きづらいし神経を使うので1時間が限度です。しかし幸いいまのところコロナ感染の患者さんはまだ出ていません。
連休はどこにも移動できず、鬱屈した日々が続きますが、なんとかみんなで乗り越えましょう。
春に想うワクチン
子どもたちは春休みに入りました。周辺は桜が満開です。
ここにきていろんな病気が流行り始めました。寒い間はインフルエンザも含め、風邪も少なかったのですが、季節の変わり目となり暖かくなったり寒くなったり温度差が出てきたころ、2月末から、高熱が出る咽頭炎や、吐き気の来る軽い胃腸炎、鼻水だらだらの風邪などが増え、みんなウイルスです。先々週から0~1歳児のRSウイルス感染が続き、普通と違って咳や呼吸困難はそれほどひどくないのですが高熱が5日くらい続きます。保育園で流行しているようです。幸い重症になる子は少ないのですが、2週間で3人が入院となりました。
私が医者になったころ子どもたちに重症の病気をもたらした感染症は今、ほとんどがワクチンによって予防できるようになりました。研修医の頃当直をしていて、夜に乳児が発熱と痙攣で来たら、必ず髄膜炎を疑って、髄液検査をして細菌培養をして診断がつけば夜中のうちに抗生剤の治療を開始していました。診断と治療が遅れると死亡や後遺症の率が高まるのです。髄膜炎の起炎菌の大部分を占めていた肺炎球菌、インフルエンザ菌は今ワクチン接種で激減し、ワクチン前は年間700人以上だった発症が、最近では10人前後の発症になっています。研修医1年目の頃、麻疹(はしか)にかかって脳炎をおこし、昏睡状態で病院に転送されてきた女の子は一度も目覚めることなく1週間で亡くなりました。出産まじかに水痘にかかったお母さんが出産した赤ちゃんは新生児水痘で重症化し脳炎になりました。先天性風疹症候群の赤ちゃんも産科から回ってきました。生まれつき心疾患と目に異常があり、いまではできる聴力検査も当時はなくて確認できませんでしたが聴力障害もあったかもしれません。当時はみな、運命と思ってあきらめるしかなかったのです。今は麻疹、風疹、水痘、みなワクチンで予防が可能です。小児科医としては本当に子どもたちが元気に育ってくれてうれしい時代になりました。
副反応が怖くてワクチンはいやだという意見もあります。実は副反応のないワクチンはありません。しかし副反応の確率は非常に少なく、ワクチンをすることにより社会全体で得られる利益が勝るので行う必要があるのです。ワクチンも次々に改良され、副反応の少ないものが開発され、変わっていきます。日本は先進国の中ではワクチン後進国で、安全なものを後出ししていますので、今やられているワクチンはほぼ安全でお薦めのものばかりです。どうぞスケジュール通りに定期接種を受けてくださいね!
食べられなくてもいいか・・・
2月に入ってから、年度替わりを控えて、アレルギーの検査・診断・診断書や生活管理指導表の記入などを求めて患者さんが増え、忙しくなってきました。
最近の食物アレルギーの考え方は、アレルギーの検査値が高くても1歳過ぎたら負荷試験をして、早くから食べていこうというのが主流です。しかし何をどのくらい、どういうふうに安全に増やしていくか具体的な指導をしていくのには知識も経験も必要です。いつも重症の卵のアレルギーの子どものお母さんにいうのですが、卵料理が食べられなくても、卵の入ったパンやお菓子が普通に食べられ、揚げ物やハムやかまぼこやハンバーグに卵が入っているかおびえながら外食を選んだり避けたりする必要がなくなれば、ずいぶん生活は楽になるんじゃない?と。卵成分が何にどのくらい入ってどのくらい加熱されているかがわかれば安全に食べるものを増やして行けます。が、続けることが重要なのです。
しかし最近は働いているお母さんが増えて、忙しい方も多いせいか、食べ物が増えていく様子を3か月に1回くらいは受診して聞かせてもらって増やすやり方を進めていきたいのだけど、この時期半年ぶり、1年ぶりという受診の患者さんも多く、あまり食べるものが増えていなかったりやめてしまったりしている方も少なくありません。子どもたちも大きくなると、卵や乳の入ったものやそのものをずっと食べ続けることを嫌がり、お母さんとけんかになったりします。最近は、そんなに嫌な思いをして、家族関係が悪くなったりして食べることが苦痛なくらいなら、やめてもいいのではないかとも思うようになりました。
今のところ、アレルギーのある子どもが食べられるようになるには少しずつ食べ続けるしか方法はないので、将来のことを思って食べられるようになったほうが便利で安全だよ、と言っていたのですが、まあ10歳にもなる子が、もう食べんでいい、と宣言するのであれば、それもまた選択肢だよね、と。
もちろん親子でがんばって何年もかかって、小麦、卵、牛乳、とひとつずつ克服している患者さんもいます。患者さんの生活や考え方や日常の優先順位はそれぞれ。一番いいやりかたを相談しましょう。