今月の独り言
腸内細菌って?
最近(さいきん)、腸内細菌(さいきん)が注目されています。人間のからだにはあちこちに細菌が住んでいて、鼻やのどの粘膜にも皮膚の上にもいるんだけど、70%はなんと腸の中にいるのです。大人の腸の中には約1000種類、100兆個の細菌がいるんですって!細菌は、ばいきんともいうみたいに、病気の原因になって悪いもの(病原菌)というイメージが強いけれど、いい腸内細菌は、栄養やエネルギーを作るのに役立っていたり、病原菌の繁殖を抑え、腸管の免疫(体を守る力)に重要な役割を果たしているのです。
赤ちゃんは出産のとき産道を通ることで、ビフィドバクテリウム、バクテロイデス、ラクトバチルスなどを獲得し、これは免疫の成熟に有用な腸内細菌です。帝王切開で生まれた子は腸内細菌の種類がかなり違っていて、メタボリック症候群や免疫関連疾患の発症頻度が高いのはそのせいだという報告が増えています。また、母乳育児ではいい腸内細菌が増えるほうに傾きます。
腸内細菌叢の異常に対してプロバイオティックスの効果が注目されています。今、いろんな製品が出ていますよね。乳酸菌を強調したヨーグルトとかサプリとか。アレルギー疾患に対する治療や予防に対する研究がいろいろされていますが、まだ確実なものはないようです。どういう背景のある人たちに、どの細菌をどのくらいの量、どれだけの期間与えて、どう評価するかというのが計画しにくいタイプの研究だからですが、小児のアレルギー疾患発症予防に効果が期待されています。
抗生剤は病原菌に対しては有効な治療ですが、不必要な抗生剤の投与は、耐性菌を増やすだけでなく、腸内細菌叢を乱して免疫に影響をあたえる可能性があります。こどもの感染症の9割以上はウイルスで、抗生剤は無効です。小児の感染症のガイドラインでは抗生剤はちゃんとした必要性を確認して使うことが勧められています。私もほんとうにこの10年、外来で抗生剤を出さなくなりましたねえ。
増えてるナッツアレルギー
3月・4月と忙しい季節でした。年度終わり・初めの検査や説明や書類書きでずいぶん時間がとられて、待ち時間が長くなる患者さんもあり、ごめんなさい。5月になるとすこし状況は改善すると思います。
最近食物アレルギーのなかでも、ナッツアレルギーの患者さんが増えてきました。ナッツといっても樹木の系統によっていろいろです。一番有名で多いのがピーナッツアレルギー。でも最近では、クルミだけとか、カシューナッツだけの患者さんも増えています。
ピーナッツアレルギーの乳幼児の7割は初めてのピーナッツ摂取で症状を起こします。なので、母親が妊娠・授乳中にピーナッツを食べて胎盤や母乳を通じて感作(IgE 抗体ができること:これがあって初めてアレルギー症状が出ます)されると考えられてきました。しかしピーナッツオイルを使ってベビーマッサージをした乳児に感作があることがわかり、最近の食物アレルギーの感作の多くは、経皮感作、すなわちバリア機能が低下した、湿疹や乾燥の強い皮膚を通じてアレルギーが成立するということになってきました。当院で、赤ちゃんの湿疹ははやくよくしましょう、というのも食物アレルギーを予防したいからが目的のひとつです。
ピーナッツアレルギーの患者さんの話を聞くと、家族の誰かがピーナッツが好きでよく食べています。アメリカの研究でも証明されていますが、赤ちゃんも母乳を与えているお母さんもピーナッツを食べていないのに、ほかの家族で食べているピーナッツが多いほどピーナッツアレルギーが増加するのです。
ピーナッツはいろんな料理に入っています。クッキーやチョコレートなどのお菓子はもちろんですが、ドレッシング、中華めんのたれ、カレーのルウのなか、中華料理の下味などです。包装された食品であれば、ピーナッツは原材料の中に表示する義務があります。外食の時も必ず確認してください。
クルミは、お菓子以外にも注意するものがあります。ドレッシングもありますが、五平餅といかなごのくぎ煮です。見た目はわかりませんが、たれにクルミが入っていることがあります。
楽しいゴールデンウィークですが、旅先では気持ちも緩んで、いつもと違う状況でつい知らないものを口にして誤食が多いです。ドライブインのお店で試食コーナーなんて気をつけてくださいね。
また今年も忙しい春です
この冬はほんとに寒かったですが、やっと3月半ばになって春めいてきました。桜が楽しみになってきましたね。
年度末の検査や書類の作成で、いつもの忙しい時期です。アレルギーの予約が取りにくくなり、土曜日も朝早くから並んでもらったり、ネット予約もすぐいっぱいで受診できなかったり、ご迷惑をかけています。医師二人でやっていますので、同じように対応できますのでご利用ください
アレルギーは慢性疾患です。治療を続けることが大切です。
喘息に関しては、長期管理といって薬をある期間継続することがあるのですが、その場合は2か月ごとの定期受診となり、薬が切れないうちに予約で受診してもらっています。そうすると発作のコントロールがうまくいきます。
アトピー性皮膚炎の塗り薬に関しては、それぞれの患者さんの重症度によって、薬の強さも塗る頻度も量も違います。プロアクティブ療法といって、ステロイドの塗り薬をしっかり塗って、よくなってもいきなりやめずに少しずつ減らしながらコントロールしていく方法は重症の患者さんにやっていますが、その場合は1週間後とか2週間後、1か月後と塗り方を変更するためにこまめに受診してもらいます。でもアトピー性皮膚炎のほとんどは軽症なので、部分的な湿疹にステロイドを塗ってよくなったらやめる、でも保湿やスキンケアは続けるというリアクティブ療法になります。最初のときに塗り方や、生活指導などはやるのですが、どうしてでしょう、やはり毎日毎日全身に保湿剤を塗る、というのは大変なのでしょうか。3-4か月分くらいの薬や保湿剤しか出してないのに、半年ぶりとか1年ぶりとかに薬がなくなりましたーと受診されると、またもとのようにガサガサざらざらぶつぶつかゆいかゆい皮膚に戻っています。慢性の病気なので、よくなっても維持することが大切なのですが、熱が出たとか咳がひどいとかでなく、皮膚だとあまり気にしないで受診しないご家族もいらっしゃいます。
食物アレルギーも、年齢とともに食べられるようになっていくのですが、食べさせなければ進みません。検査のたびに説明して、卵や乳製品の食べ方を説明するのですが、半年、1年ぶりに受診され、「食べられるようになりましたー?」と聞くと、「いや怖くて食べさせていません」「食べてくれません」「かゆいというのでやめちゃいました」「忙しくて・・・」。食べることも治療なのでこれでは治っていきません。半年放っておかずに、うまくいかなければまた心配なことがあれば、2-3か月くらいでまた相談してほしいのです。
それでも、中学生になる、高校生になるといった成長した子どもたちが久しぶりに来てくれる春休みは、彼らの成長を親御さんと一緒に喜びます。小児科医になって一番の楽しみですね。