ワクチンの恩恵

普通6月は病気の少ない時期なのですが、今年はバタバタと忙しくしています。手足口病は毎年夏に流行するウイルス疾患ですが、今年は大流行。それも、結構発疹がひどいタイプが多いです。跡形もなくよくなりますけどね。リンゴ病も全国的に流行中。これらはワクチンで予防できないのでまあ仕方がないのですが、ワクチンで予防できているはずの麻疹や風疹がパラパラと流行しているのは問題です。大阪で先天性風疹症候群の子どもが確認され、大昔からわかっていて予防できるはずの病気がいまだに日本で出ることにびっくりです。妊娠する女性だけを対象にワクチンをした時期があって、いやあ人口の半分は男性だし、妊娠する女性には必ず男性のパートナーがいるのだから、女にだけワクチンってどうよ、と当時から思っていましたが、やっぱり。今になって慌てて、その世代の男性の風疹ワクチン接種をよびかけていますが、遅いよね。

昔医者になったころは、麻疹で亡くなった子を何人も診たし、ある患者さんの若いお父さんは風疹の脳炎で亡くなりました。赤ちゃんの百日咳で命があぶなかった子もいたし、出産直前にお母さんが水痘にかかり、出産した赤ちゃんが感染していて、必死の治療をしたけれど三日で亡くなってしまったこともありました。赤ちゃんが高熱と嘔吐で救急で来れば髄膜炎を疑い、もしそうであれば1/3は死亡、1/3は後遺症、1/3は助かる、と言われていたものです。それを起こす肺炎球菌とインフルエンザ菌のワクチンが始まって、ほんとに髄膜炎はなくなりました。若い小児科医はこういう病気を見たことがないでしょう。

ワクチンは防げる病気を社会全体で防いで子どもたちを守るのです。最近はほんとうに30年前と違っていい時代になっているのです。

診察で何を話すか?

連休明けから、夏のような暑さとなり、早くも夏の病気が増えてきました。
のどが赤く痛くなり、高熱が3-5日続くアデノウイルスや、手足にぶつぶつ、のどにぶつぶつができる手足口病などです。ウイルス性の胃腸炎は4月に比べ減ってきました。リンゴ病は全国的に流行していて、まだぱらぱらと見かけます。
本来は喘息の発作の少ない季節のはずですが、気候の変化のせいか、流行りのウイルスの種類によるのか、喘息の子の風邪に伴う発作もけっこうあります。
朝からたくさんの受診の申し込みがあるのだけれど、喘息やアレルギーの患者さんが多いせいでしょうか、ひとりひとりの患者さんの診察や処置や説明に時間がかかり、昨日の水曜日は診察開始1時間で終了した患者さんは6人でした。ひとりめは喘息の子の発熱、発作なし。ふたりめは喘息と肺炎の合併で入院していた子の退院後。何度も繰り返すのでお母さんと相談して、大きな病院で精密検査のため紹介することになりました。こういうお話をしているとひとりに10分くらいかかる。次の兄弟はひとりに喘息が出ていて、吸入に回り、そのあともう一度診察。次の姉妹も、ひとりは喘息入院の退院後で薬の長期管理に入りましたが、妹のほうに喘息発作があって薬を開始することになりその説明も。次の子も熱とともに咳があり吸入に回りました。
だから、朝いちに診てもらって薬もらって少し遅れて保育所に預けて仕事にいこう、とかすこし1時間目遅刻して学校に行こう、という小学生にとっては待ち時間長すぎ!ということになるのかな。普通の小児科さんだとさらさら診察がすすむのかしら。患者さんも上手に医者を使い分けていただいていいと思うのですが、なかにはこちらで喘息治療をしていて夕方熱が出て近くの小児科に行くと、うちでは診ない、かめさきに行け!なんていわれて困った患者さんの話も聞きます。こちらだって、最初に診てもらって薬が効かない、と次にこちらに受診される患者さんのときに、この先生もはじめはこういう診断で薬出したけど効かなかったら次はこうする、という考えがあったのかもなあと思います。そんなに言わずにみんなで子どもたちを診たらいいと思うけどなあ。私は自分でわからないものや専門でないものは、患者さんにごめん、わからん!と言います。
まあでも、こどもの感染症は自力で自然に治るものがほとんどで薬なんてあんまり効かないことも多いので、小児科医の役割は、重症の、本当に治療が必要な患者さんを見落とさないことだと思ってます。喘息やアレルギーに関しては専門なので治療の必要性をよくお話しし、自然に治る感染症に関しては予想される経過を話して薬のいらないわけを話す。あれ、どっちにしてもお話が長くなって時間がかかるはずだ。患者様方、お待たせしてすみません。

4月の外来は・・・

4月の外来は患者さんが多くて、受診できない、予約できない、待ち時間が長いなどの患者さんのご不満があるかと思いますがごめんなさい。医者も生きている人間なので、どうしても限界があります。
4月は、アレルギーの患者さんも多いのですが、保育園に行き始めた小さい子たちの小児科的病気も多いです。1歳前後の子どもたちが保育園デビューすると、たいてい2週間以内で風邪をひきます。鼻水や咳くらいならいいのですが、38度くらいの熱が出ると保育園から呼び出しがかかるし、預かってもらえない。今はウイルス性の胃腸炎もぱらぱら流行っていて、吐いたり下痢したりもします。いつもお母さんたちに言うのですが、熱があっても、咳をしていても、まあまあ機嫌がよくてまあまあ食べられて眠れていれば大丈夫。熱がなくても症状がなくても、機嫌・食欲・睡眠がよくなければ大きな病気のことがあります。
先日は1歳のお子さんがずっとおえっと咳込みがつづいて、何かのどにあるものを出そうとしているのです。何かがのどにひっかかっているようです。診察した海老島先生がファイバー検査で取り出してくれる病院に紹介しようと考えていたら、その子の舌のうえに何かが見えて、手でぱっととりだしたら、缶飲料に貼ってあったプラスチックのシールだったんですって。0歳-2歳くらいの子はなんでも口にいれますので要注意。突然咳込みが続いたり呼吸がおかしくなったら誤嚥を疑います。ボタン式電池は要注意、食道や胃に穴があくこともあります。
あわただしい新学期、新年度、みんな元気で。5月の長期連休になりますが、うちも4月28日から9連休です。皆さん元気で楽しくお過ごしください。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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