今月の独り言
4月は忙しかった・・・・
4月はとっても忙しかったです。昼休憩なしの外来が続きました。
年度替わりの、食物アレルギーで除去食の必要な子どもたちの検査・結果説明・園や学校の管理指導表の記載などは毎年のことです。最近は早くから食べさせることが推奨されてきて、乳幼児期の卵・乳・小麦の除去はだいたい小学校に入るころには不要になることが多いのですが、その代わりこの10年で、ピーナッツやナッツ類のアレルギーが増えて、その診断書が多いです。今年はスギ花粉の飛散が多かったので今年花粉症デビューしアレルギー検査希望で来院される方も多かったです。
コロナ禍で転勤・転居も少なかったのが今年はずいぶん引っ越しも多く、紹介状をたくさん書きましたが、逆に引っ越してきて紹介状がない場合は、家族にお話を聞いたり検査結果を見せてもらったりするので一人の診察にすごく時間がかかります。
また、4月は学校や園で新学期が始まり、初めて集団生活に入った乳幼児、3歳児の多くは1週間以内に鼻水を垂らし始め、1か月以内に発熱します。鼻水メインのかぜ、のどが痛くて発熱して咳がひどいのどかぜ、嘔吐と下痢のある胃腸炎などウイルス性の感染症が複数流行しています。いちばん大変なのがRSウイルス感染症で、年長児や大人がかかると普通の風邪ですが、1歳未満の乳児がかかると気管支炎や肺炎になって重症化します。本来は寒い季節に流行するのですが、昨年の春もおおかったのですが、またこれが流行しており、当科で2週間のあいだに6人入院しました。熱が上がり下がり5日から7日続き、咳とぜいぜいがひどくなり、だんだん飲みが悪くなるのです。最初はなんとか頑張れるかなと思っていても半日で状態が悪化するので気が抜けません。
先週の水曜日は外来始めてから3人立て続けに入院となり、診察、検査やレントゲン、説明、紹介状書きを続けてしていたら1時間半たち、午前の外来の患者さんを大幅にお待たせし、午後のアレルギーの予約も1時間遅れとなりました。申し訳ありませんでした。でもひとりで外来をしていると、重症ではやく楽にしてあげたい患者さんが優先になります。とくにうちはアレルギーや喘息の患者さんが多く、呼吸器を半ば専門にやっているので、絶対にミスしたくないのです。スタッフもがんばってくれています。
さあGW明けの5月はどうでしょうか。いい季節になるので、感染症も喘息発作も減るはずなのですが。新型コロナも5類感染症となるので当科の感染対策も少し変わります。よろしくお願いします。
春は忙しい
3~4月は、年度替わりの時期で、食物アレルギーの管理指導表の記載のために来院される患者さんが増え、検査やその結果説明、新たな食べ方指導に時間がかかっています。1年ぶりや数年ぶりに受診される方が多いのです。3年くらいコロナのせいで親の転勤による転居も少なかったのですが、今年は多く、紹介状を書いたり、またあらたに転居してきた新患の患者さんが多くみえています。今年は花粉の量も多いので、花粉症の症状を訴えて検査を希望される患者さんも増えています。年長児や中学生はとくに春休みになって増えました。
というわけで、患者さんの受診の希望が多く、予約が取れないとか、ネットの枠が取れないという方もいらっしゃるようです。申し訳ありません。なにしろ専門医に対してアレルギーの専門医療を希望される患者さんが多いのです。ひとりや二人でやれることは物理的に限られていて、ぶっ通しで診療をやっても追いつかないくらい。あまり無理をすると集中力が落ちてミスをしたり、患者さんに親切にできなくなるのでは、という心配もあります。
アレルギーの専門医になるにはある一定の教育課程を経て試験に通る必要がありますが、専門医の資格がなくても、看板にアレルギー科を標榜することはできます。17年前に豊中市に開業したとき豊中市にはアレルギー専門医の小児科医がふたりしかいませんでしたが、ちっとも増えていないのです。たくさん正しい専門医療をしてくれる先生が増えたら、たくさんの患者さんが待たずにすむし、私もすこし楽になるのですが。
そう思いながらなんとか4月も乗り越えていかないといけません。お待たせしたり希望の日に受診できないかもしれませんが、よろしくご理解ください。
咳はとめなきゃいけない?
子どもがかぜをひくと、熱、鼻水、咳というのが主な症状です。
熱は、病原体が体に侵入したときに起こる生体側の反応です。体温を上げてウイルスが増殖しにくい状態にしているのです。ウイルスの種類によって熱の高さや経過、持続はさまざまです。アデノウイルスは、上がったり下がったりのギザギザの熱が3-5日続きますし、インフルエンザは、ワクチンもしておらず抗インフルエンザ薬を飲まなければ、普通39度前後の熱が3日から5日続き、倦怠感が強いです。突発性発疹症は、いきなり39-40度の熱がまる3日続いて、すとんと下がると同時に体中に発疹が出始めます。私が皆さんに、熱を測って熱型表をつけてね、とお願いするのは、すごく診断の役にたつからです。
咳も皆さん心配されますが、咳を止めるのではなく、咳がどうして出ているかが子どもの場合問題です。2歳未満の乳幼児で鼻水があって、ごろごろいう咳がある場合、多くは鼻水がかめなくて、鼻の奥からのどに垂れて、それを出そうとして咳をするのです。なので、鼻の奥にたまった鼻水を吸引して、鼻水をへらし痰がからまないようにするのです。最近流行しているのはのどにつくウイルスで、けんけん、こんこんとかわいた咳をします。胸の音はきれいです。のどについた病原体を出そうとして咳をするので、のどの炎症を抑える薬を出します。
私は気管支喘息を専門にやっているので、胸の音を一生懸命聞きます。喘息では気管支の粘膜に炎症があり、発作時には気管支が収縮して痰がからんで、ぜいぜいと喘鳴(ぜんめい)が聞こえ、空気が肺に入りにくくなるのです。気管支の中の痰を出そうとして、湿った咳をします。こういうときに、風邪薬の咳止め(アスベリン、メジコンなど)を服用すると、咳がとまって痰がつまって発作が悪化します。気管支拡張剤を吸入したり飲んだりして気管支を広げて痰を出してやらねばならないのです。小児の気管支喘息のガイドラインにはちゃんと、「喘息発作時に鎮咳剤は禁忌」と書いてあるのですが、耳鼻科の先生、内科の先生、小児科でもガイドラインを知らない年配の先生などはよく咳止めを処方されます。
そもそも咳は、何か体にわるいものを出そうとする反射なので、止めなければならない咳というのは小児ではめったにありません。今はもうあまり見ませんが百日咳のしつこい咳とか、喘息がないとはっきりわかっている年長児のしつこい咽頭炎の咳には、咳止めの薬も出してもいいかと思いますが。
熱型を見て、のどを見て、胸の音を聞いて、総合的に何が起こっているかを判断し処置をし薬を出す、毎日これが小児科医稼業です。結構続いて忙しいですが、がんばります。