喘息の薬に注意!

暑い暑いよー。夏休みの時期になりましたが猛暑。まだ発熱の子も多いです。ヘルパンギーナやRSはもう減っていて、今はアデノウイルスや溶連菌が多いです。インフルエンザ(夏に!!)やコロナもパラパラあるので要注意です。

昨日、6歳になったSちゃんが来院しました。Sちゃんは保育園に行き始めた1歳過ぎから風邪ひくとゼイゼイを繰り返し、2歳から喘息発作予防の長期管理治療を続けており、モンテルカストを始め、それでもコントロールつかず、ステロイド吸入を吸入補助具を使って追加しました。軽くはなりましたがそれでも年に3-4回軽い喘鳴があり、一度は肺炎で入院もしました。でもずっと長期管理の薬を続け、この半年は発作なし。それで6歳になったので、呼吸機能の検査をしました。そうすると、しっかり吸えて吐いて、正常の曲線が描けたのです。本当にほっとして、薬をランクダウンしました。入学までに薬が止められるといな。

前にも書きましたが、喘息は、発作の治療だけ繰り返して、気道の炎症をよくする長期管理をしていないと、気道の可逆性が失われて、リモデリングという状態になります。そうすると呼吸機能は正常化せず、大人になってもよくならないんです。長期管理のモンテルカストや吸入ステロイドのなかった時代、喘息発作のたびに発作治療をして、成長してよくなってきたなあと思っても、6歳になって呼吸機能が初めからよくない子も多く、ああこのハンディを負っていくんだなあと悲しかったです。

そこで、喘息の薬で、こういう処方をされていたら注意。

1)喘息発作に使う気管支拡張剤のテープやメプチンの内服が、いっぺんに28日分出されている。

→気管支拡張剤の処方は最長14日とガイドラインに書いてあります。つまり、気管支拡張剤が効いているうちに長期管理を検討して発作なしの状態をつくりましょうというわけです。気管支拡張剤を使用していれば楽なのは当たり前ですが、止めるとまた発作になります。気道の炎症は治っていないからです。

2)モンテルカストやプランルカストが毎回1週間出て、続いて処方されない。

→これは長期管理薬です。発作時に気管支拡張剤と一緒に1週間処方をされるのはわかりますが、1週間後よくなっていたら継続し、最低3か月長期管理をして発作を予防します。これもガイドラインに書いてあります。

3)吸入ステロイドのMDI(おしてプシュっと煙の出る携帯型)が吸入補助具なしで処方されている。

→モンテルカストを飲んでいても発作が出れば、長期管理のステップアップとして吸入ステロイドが適応になります。しかしこのMDIは押したときに同時にくわえて吸気と息止めが必要で、6歳未満は100%無理です。そのために、スペーサーという吸入補助具があります。これなしに処方されて、吸っといて、といわれるだけならその先生は小児喘息を知りません。スペーサーは、保険が効いて、無料で提供できますが、そもそも置いていないのでしょう。

まだまだ暑さは続きますが、感染に気をつけて、熱中症に気をつけて、皆さん楽しい夏休みを過ごしてくださいね。

夏かぜ・マスクについて

6月になって、夏かぜが大流行です。夏かぜは風邪といっても、咳や鼻水はあまりなく、のどが赤くなり痛くなり、高熱がポンと出ることが多いです。何種類もウイルスがありますが、名前がついて有名な病気はヘルパンギーナや手足口病です。熱が高くてのどが痛くて食べられなくなりますが、からだは元気で、なんとか数日頑張ってもらえれば先の見通しがついてるし、重大な合併症も少ないのでご家族にお話ししやすいです。

新型コロナが5類になって、マスク着用も個人の判断に任せられるようになりました。そもそもマスクは、自分が呼吸器感染症にかかったときに病原体が鼻水や唾液に含まれているので、ひとに感染させないようにつけるのが基本です。病気の自覚のある方はぜひつけてください。では、マスクによって人からの感染が防げるかというと、それは場合によります。人のつばがマスク以外の顔や目にはいれば、それをぬぐうことによって感染するかもしれないし、はしかのような空気感染をするウイルスでは効果は限定的です。マスクをしてれば安心というのは医学的に根拠が十分ではなく、めりはりが必要です。インフルエンザがどこにいるかわからない季節では人混みでマスクをつけるのは意味があるかもしれませんが、今の季節では熱中症のリスクも考えないといけません。

長いこと小児科医をやってきましたが、コロナ以前は、発熱の子どもたちを診るときも、手洗いはしましたがマスクをつけることはありませんでした。それは子どもの感染症はほとんどがウイルスで、大人はとくに小児科医は抗体を持っていることが多いので診療で患者さんから感染を受けることはめったにないのです。インフルエンザも、ワクチンのない時代でもかかったことがありません。

アレルギーの専門をやっていると詳しいお話をすることが多く、長く話をしているとマスクをしていると苦しくなります。マスクはそもそも話をする前提でつくられていないのです。というわけで、感染のおそれがなく、お話をするときはマスクをはずさせていただきますのでご了承下さい。

喘息の長期管理がなぜ必要か

気管支喘息とは、もともと気管支の粘膜に炎症があって過敏なところに、風邪や運動や冷たい空気などの刺激が加わって、気管支が収縮し、内腔が狭くなって空気が入りにくくなります。そこで息をするとぜいぜい、ひゅうひゅうという音(喘鳴ぜんめい)が聞こえて、分泌物が痰になってそれを出すために咳が出るし、空気が十分入らないと呼吸が苦しくなり血中の酸素濃度が下がります。問題は刺激が加わって発作になった時の治療だけでなく、もともとの炎症を抑える治療を続けないと何回も発作を繰り返すのです。発作のないときでも炎症を抑える予防の治療を長期管理といって、発作がない時期を3か月、半年、1年と続けて治療すると子どもの喘息は治っていくことが多いのです。

私が医者になった30何年前は長期管理薬のロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストやプランルカスト)やステロイドの吸入薬がなかったので、何度も発作をくり返して入院する喘息の重症の子どもたちに点滴をし、一晩中起きて発作用の吸入をさせることが仕事でした。今は長期管理薬ができて、喘息の発作入院は激減しています。

そういう長期管理をしている患者さんがこの前発熱があって救急外来を受診したら医者から、発作もおきてないのにこんな薬を何か月も続けてるなんて、と言われたそうで、親御さんはすっかり動揺してしまいました。おーい、こっちはその子が発作でしんどいときから1年以上もつきあってるんだよ、熱出しても発作にならないのはその薬が効いてるんだよ。通りがかりに診たくらいで喘息を知らん奴が余計なこと言うな!と思いましたが、相手もわからんし心の中で悔しい気持ちを叫ぶだけです。でも、子どもの喘息の治療の仕方はガイドラインという教科書にちゃんと明記してあるのです。3回以上喘鳴があれば喘息の診断で長期管理を始めること、1~3か月の経過で発作がなければ少しずつ薬を減らしていくことなどです。最近の若い先生は本当にひどい喘息の発作や長期管理のやりかたを知らないのです。せめてガイドラインで勉強してくださいねー。

先日初診で4歳の男の子が来ました。診察室に入ってくるその子の様子を見て私はぎょっとしました。まえかがみでよろよろと力なく歩き、椅子に座ると背中を丸め、両手を両ひざについてつっかい棒のようにしているのです。これは、呼吸が苦しくて効率を高めるために無意識にやる姿勢で、昔発作で入院した子はみなベッドに起き上がってこのポーズでした。案の定聴診すると明らかな喘鳴で痰も多く、血中酸素濃度も下がりかけています。聞くと、2年前から咳や苦しいのを繰り返し、月に2回くらいかかりつけ医に受診しているのですが、毎回プランルカストは数日とか1週間しか出ていないし、少しよくなると薬なしでいる。喘息といわれてはいるのですが、適正な重症度診断がされていなくて長期管理という発想がない!さいわいその子は気管支拡張剤を吸ってもらうと喘鳴が消失し、酸素も上がったので、お母さんに喘息の成り立ちと治療のお話をし、今の状態を乗り切るための気管支拡張剤の薬プラス、長期管理薬をしっかり入れて1週間後に予約で来てもらいました。すると2回目は背をのばしてにこにこと入ってきて喘鳴が消えていたのでほっとしました。でも治療はこれからなのです。長期管理薬を続けて、次に風邪をひいたときに喘鳴が出ないように気道のいい状態をキープしなければなりません。年単位になると思います。ちなみに発作を繰り返して気道の炎症が進むと、6歳になった時点で呼吸機能をしてみると、気道が固くなって広がらなくなり、リモデリングといって気道の閉塞した状態が続きます。そうなると喘息は治らず、成人になっても発作を繰り返すのです。昔は長期管理がなくそうなっていく子が多かったのです。

小さいころ喘息で通っていた子どもたちも多くはよくなって、何人も成人しています。大学院生や学校の先生やエンジニア、ピアニストになった子もいます。皆元気になって好きなことをやれていて本当によかったです。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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