春は忙しい

3~4月は、年度替わりの時期で、食物アレルギーの管理指導表の記載のために来院される患者さんが増え、検査やその結果説明、新たな食べ方指導に時間がかかっています。1年ぶりや数年ぶりに受診される方が多いのです。3年くらいコロナのせいで親の転勤による転居も少なかったのですが、今年は多く、紹介状を書いたり、またあらたに転居してきた新患の患者さんが多くみえています。今年は花粉の量も多いので、花粉症の症状を訴えて検査を希望される患者さんも増えています。年長児や中学生はとくに春休みになって増えました。

というわけで、患者さんの受診の希望が多く、予約が取れないとか、ネットの枠が取れないという方もいらっしゃるようです。申し訳ありません。なにしろ専門医に対してアレルギーの専門医療を希望される患者さんが多いのです。ひとりや二人でやれることは物理的に限られていて、ぶっ通しで診療をやっても追いつかないくらい。あまり無理をすると集中力が落ちてミスをしたり、患者さんに親切にできなくなるのでは、という心配もあります。

アレルギーの専門医になるにはある一定の教育課程を経て試験に通る必要がありますが、専門医の資格がなくても、看板にアレルギー科を標榜することはできます。17年前に豊中市に開業したとき豊中市にはアレルギー専門医の小児科医がふたりしかいませんでしたが、ちっとも増えていないのです。たくさん正しい専門医療をしてくれる先生が増えたら、たくさんの患者さんが待たずにすむし、私もすこし楽になるのですが。

そう思いながらなんとか4月も乗り越えていかないといけません。お待たせしたり希望の日に受診できないかもしれませんが、よろしくご理解ください。

咳はとめなきゃいけない?

子どもがかぜをひくと、熱、鼻水、咳というのが主な症状です。

熱は、病原体が体に侵入したときに起こる生体側の反応です。体温を上げてウイルスが増殖しにくい状態にしているのです。ウイルスの種類によって熱の高さや経過、持続はさまざまです。アデノウイルスは、上がったり下がったりのギザギザの熱が3-5日続きますし、インフルエンザは、ワクチンもしておらず抗インフルエンザ薬を飲まなければ、普通39度前後の熱が3日から5日続き、倦怠感が強いです。突発性発疹症は、いきなり39-40度の熱がまる3日続いて、すとんと下がると同時に体中に発疹が出始めます。私が皆さんに、熱を測って熱型表をつけてね、とお願いするのは、すごく診断の役にたつからです。

咳も皆さん心配されますが、咳を止めるのではなく、咳がどうして出ているかが子どもの場合問題です。2歳未満の乳幼児で鼻水があって、ごろごろいう咳がある場合、多くは鼻水がかめなくて、鼻の奥からのどに垂れて、それを出そうとして咳をするのです。なので、鼻の奥にたまった鼻水を吸引して、鼻水をへらし痰がからまないようにするのです。最近流行しているのはのどにつくウイルスで、けんけん、こんこんとかわいた咳をします。胸の音はきれいです。のどについた病原体を出そうとして咳をするので、のどの炎症を抑える薬を出します。

私は気管支喘息を専門にやっているので、胸の音を一生懸命聞きます。喘息では気管支の粘膜に炎症があり、発作時には気管支が収縮して痰がからんで、ぜいぜいと喘鳴(ぜんめい)が聞こえ、空気が肺に入りにくくなるのです。気管支の中の痰を出そうとして、湿った咳をします。こういうときに、風邪薬の咳止め(アスベリン、メジコンなど)を服用すると、咳がとまって痰がつまって発作が悪化します。気管支拡張剤を吸入したり飲んだりして気管支を広げて痰を出してやらねばならないのです。小児の気管支喘息のガイドラインにはちゃんと、「喘息発作時に鎮咳剤は禁忌」と書いてあるのですが、耳鼻科の先生、内科の先生、小児科でもガイドラインを知らない年配の先生などはよく咳止めを処方されます。

そもそも咳は、何か体にわるいものを出そうとする反射なので、止めなければならない咳というのは小児ではめったにありません。今はもうあまり見ませんが百日咳のしつこい咳とか、喘息がないとはっきりわかっている年長児のしつこい咽頭炎の咳には、咳止めの薬も出してもいいかと思いますが。

熱型を見て、のどを見て、胸の音を聞いて、総合的に何が起こっているかを判断し処置をし薬を出す、毎日これが小児科医稼業です。結構続いて忙しいですが、がんばります。

2023.1月です

年が明けて、インフルエンザが流行し始めました。1月後半から大流行になっているようです。コロナの感染もまた増えてきて、株が変わったため、2回目の感染ということもあり得ます。毎日、発熱の患者さんは隔離して、熱の出方や続き方、年齢や症状や周囲の感染状況を確認しながら、診察し検査し診断していくのでなかなか大変です。インフルエンザもコロナも陽性にならない、普通のかぜの熱も多いんですけどね。

風邪の症状というと、熱、鼻水、咳ですが、これはみな、上気道に侵入した病原体(ほとんどはウイルス)をやっつけようという身体の反応なのです。多くのウイルスは37度くらいの正常体温で増殖しやすいので、体温をあげて増殖しにくいようにする。ウイルスの種類によっては熱が上がったり下がったりを繰り返します。鼻水は鼻腔内に入ったウイルスに対する反応で、鼻水のなかにはウイルスがいっぱい入っている。咳もウイルスを出そうとする反応で、とくにのどにウイルスがつくとかわいたしつこい咳が出ます。咳はそのほかにも、小さい子では鼻水がのどに流れてそれを出そうとして咳するし、気管支や肺に炎症が起こるとそこにいる病原体を出そうとして痰のからんだ咳になるので、どこからの咳か、という診断が大切です。

熱も鼻水も咳も体の免疫反応なので、正常の健康体なら何も薬なしでよくなっていくはずですが、まあそうもいかない。熱が高ければ解熱剤、鼻水が出れば、鼻水を出しやすくする薬を出します。咳はどこからかの咳によります。ときどき咳止めをくださいという親御さんがいらっしゃいますが、咳は病原体を出す反応なので、強い咳止めは小児では使いません。とくに喘息があると、気管支のなかの痰を出そうと咳をするので、咳止めを使うと痰がつまることがあります。喘息発作のときには咳止めは禁止、とガイドラインには書いてあるのですが、知らない先生も多くてときどきあれっということがあります。のどからの咳ならのどの炎症止め、鼻水がたれての咳なら鼻の薬、気管支からなら気管支拡張剤となります。

そういう説明をしながらの診療なので時間がかかってます。お待たせしてすみませんね。寒い時期を元気に乗り越えましょう。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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