夏かぜ・マスクについて

6月になって、夏かぜが大流行です。夏かぜは風邪といっても、咳や鼻水はあまりなく、のどが赤くなり痛くなり、高熱がポンと出ることが多いです。何種類もウイルスがありますが、名前がついて有名な病気はヘルパンギーナや手足口病です。熱が高くてのどが痛くて食べられなくなりますが、からだは元気で、なんとか数日頑張ってもらえれば先の見通しがついてるし、重大な合併症も少ないのでご家族にお話ししやすいです。

新型コロナが5類になって、マスク着用も個人の判断に任せられるようになりました。そもそもマスクは、自分が呼吸器感染症にかかったときに病原体が鼻水や唾液に含まれているので、ひとに感染させないようにつけるのが基本です。病気の自覚のある方はぜひつけてください。では、マスクによって人からの感染が防げるかというと、それは場合によります。人のつばがマスク以外の顔や目にはいれば、それをぬぐうことによって感染するかもしれないし、はしかのような空気感染をするウイルスでは効果は限定的です。マスクをしてれば安心というのは医学的に根拠が十分ではなく、めりはりが必要です。インフルエンザがどこにいるかわからない季節では人混みでマスクをつけるのは意味があるかもしれませんが、今の季節では熱中症のリスクも考えないといけません。

長いこと小児科医をやってきましたが、コロナ以前は、発熱の子どもたちを診るときも、手洗いはしましたがマスクをつけることはありませんでした。それは子どもの感染症はほとんどがウイルスで、大人はとくに小児科医は抗体を持っていることが多いので診療で患者さんから感染を受けることはめったにないのです。インフルエンザも、ワクチンのない時代でもかかったことがありません。

アレルギーの専門をやっていると詳しいお話をすることが多く、長く話をしているとマスクをしていると苦しくなります。マスクはそもそも話をする前提でつくられていないのです。というわけで、感染のおそれがなく、お話をするときはマスクをはずさせていただきますのでご了承下さい。

喘息の長期管理がなぜ必要か

気管支喘息とは、もともと気管支の粘膜に炎症があって過敏なところに、風邪や運動や冷たい空気などの刺激が加わって、気管支が収縮し、内腔が狭くなって空気が入りにくくなります。そこで息をするとぜいぜい、ひゅうひゅうという音(喘鳴ぜんめい)が聞こえて、分泌物が痰になってそれを出すために咳が出るし、空気が十分入らないと呼吸が苦しくなり血中の酸素濃度が下がります。問題は刺激が加わって発作になった時の治療だけでなく、もともとの炎症を抑える治療を続けないと何回も発作を繰り返すのです。発作のないときでも炎症を抑える予防の治療を長期管理といって、発作がない時期を3か月、半年、1年と続けて治療すると子どもの喘息は治っていくことが多いのです。

私が医者になった30何年前は長期管理薬のロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストやプランルカスト)やステロイドの吸入薬がなかったので、何度も発作をくり返して入院する喘息の重症の子どもたちに点滴をし、一晩中起きて発作用の吸入をさせることが仕事でした。今は長期管理薬ができて、喘息の発作入院は激減しています。

そういう長期管理をしている患者さんがこの前発熱があって救急外来を受診したら医者から、発作もおきてないのにこんな薬を何か月も続けてるなんて、と言われたそうで、親御さんはすっかり動揺してしまいました。おーい、こっちはその子が発作でしんどいときから1年以上もつきあってるんだよ、熱出しても発作にならないのはその薬が効いてるんだよ。通りがかりに診たくらいで喘息を知らん奴が余計なこと言うな!と思いましたが、相手もわからんし心の中で悔しい気持ちを叫ぶだけです。でも、子どもの喘息の治療の仕方はガイドラインという教科書にちゃんと明記してあるのです。3回以上喘鳴があれば喘息の診断で長期管理を始めること、1~3か月の経過で発作がなければ少しずつ薬を減らしていくことなどです。最近の若い先生は本当にひどい喘息の発作や長期管理のやりかたを知らないのです。せめてガイドラインで勉強してくださいねー。

先日初診で4歳の男の子が来ました。診察室に入ってくるその子の様子を見て私はぎょっとしました。まえかがみでよろよろと力なく歩き、椅子に座ると背中を丸め、両手を両ひざについてつっかい棒のようにしているのです。これは、呼吸が苦しくて効率を高めるために無意識にやる姿勢で、昔発作で入院した子はみなベッドに起き上がってこのポーズでした。案の定聴診すると明らかな喘鳴で痰も多く、血中酸素濃度も下がりかけています。聞くと、2年前から咳や苦しいのを繰り返し、月に2回くらいかかりつけ医に受診しているのですが、毎回プランルカストは数日とか1週間しか出ていないし、少しよくなると薬なしでいる。喘息といわれてはいるのですが、適正な重症度診断がされていなくて長期管理という発想がない!さいわいその子は気管支拡張剤を吸ってもらうと喘鳴が消失し、酸素も上がったので、お母さんに喘息の成り立ちと治療のお話をし、今の状態を乗り切るための気管支拡張剤の薬プラス、長期管理薬をしっかり入れて1週間後に予約で来てもらいました。すると2回目は背をのばしてにこにこと入ってきて喘鳴が消えていたのでほっとしました。でも治療はこれからなのです。長期管理薬を続けて、次に風邪をひいたときに喘鳴が出ないように気道のいい状態をキープしなければなりません。年単位になると思います。ちなみに発作を繰り返して気道の炎症が進むと、6歳になった時点で呼吸機能をしてみると、気道が固くなって広がらなくなり、リモデリングといって気道の閉塞した状態が続きます。そうなると喘息は治らず、成人になっても発作を繰り返すのです。昔は長期管理がなくそうなっていく子が多かったのです。

小さいころ喘息で通っていた子どもたちも多くはよくなって、何人も成人しています。大学院生や学校の先生やエンジニア、ピアニストになった子もいます。皆元気になって好きなことをやれていて本当によかったです。

4月は忙しかった・・・・

4月はとっても忙しかったです。昼休憩なしの外来が続きました。

年度替わりの、食物アレルギーで除去食の必要な子どもたちの検査・結果説明・園や学校の管理指導表の記載などは毎年のことです。最近は早くから食べさせることが推奨されてきて、乳幼児期の卵・乳・小麦の除去はだいたい小学校に入るころには不要になることが多いのですが、その代わりこの10年で、ピーナッツやナッツ類のアレルギーが増えて、その診断書が多いです。今年はスギ花粉の飛散が多かったので今年花粉症デビューしアレルギー検査希望で来院される方も多かったです。

コロナ禍で転勤・転居も少なかったのが今年はずいぶん引っ越しも多く、紹介状をたくさん書きましたが、逆に引っ越してきて紹介状がない場合は、家族にお話を聞いたり検査結果を見せてもらったりするので一人の診察にすごく時間がかかります。

また、4月は学校や園で新学期が始まり、初めて集団生活に入った乳幼児、3歳児の多くは1週間以内に鼻水を垂らし始め、1か月以内に発熱します。鼻水メインのかぜ、のどが痛くて発熱して咳がひどいのどかぜ、嘔吐と下痢のある胃腸炎などウイルス性の感染症が複数流行しています。いちばん大変なのがRSウイルス感染症で、年長児や大人がかかると普通の風邪ですが、1歳未満の乳児がかかると気管支炎や肺炎になって重症化します。本来は寒い季節に流行するのですが、昨年の春もおおかったのですが、またこれが流行しており、当科で2週間のあいだに6人入院しました。熱が上がり下がり5日から7日続き、咳とぜいぜいがひどくなり、だんだん飲みが悪くなるのです。最初はなんとか頑張れるかなと思っていても半日で状態が悪化するので気が抜けません。

先週の水曜日は外来始めてから3人立て続けに入院となり、診察、検査やレントゲン、説明、紹介状書きを続けてしていたら1時間半たち、午前の外来の患者さんを大幅にお待たせし、午後のアレルギーの予約も1時間遅れとなりました。申し訳ありませんでした。でもひとりで外来をしていると、重症ではやく楽にしてあげたい患者さんが優先になります。とくにうちはアレルギーや喘息の患者さんが多く、呼吸器を半ば専門にやっているので、絶対にミスしたくないのです。スタッフもがんばってくれています。

さあGW明けの5月はどうでしょうか。いい季節になるので、感染症も喘息発作も減るはずなのですが。新型コロナも5類感染症となるので当科の感染対策も少し変わります。よろしくお願いします。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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