4月のシャーロックホームズ

4月は新年度、保育園・幼稚園に行き始める子どもたちが多く、いろんな病気にかかって受診されます。特に0~3歳児で、初めて集団生活に入ると、流行している感染症を次々にもらうんですね。1-2週間で鼻水がでて、1か月以内に熱が出る、というのが私の見立てです。でも、感染症といったって、普通の風邪―上気道炎がほとんどです。1~3日の発熱と鼻水・咳ですが元気です。ウイルス性の胃腸炎も流行っていますが、軽く、熱は1日のみ、半日吐いてあとは下痢が数日。でも吐き気が止まれば割と元気です。いずれもウイルス増殖がおさまるのを待つしかありません。昔は本当に重症になるあるいは合併症の多いウイルス疾患、麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜで小児科は大変でしたが、今は予防接種のおかげでほんとに見なくなりました。

少し前までは、インフルエンザ、新型コロナも流行していましたが、最近は少なくなっています。溶連菌は相変わらず流行中です。溶連菌は咽頭発赤が強く熱が続き、検査で出れば、細菌なので抗生剤という治療法があります。疑って検査することが重要です。先日高熱が4日続くと受診された子、二日目に他の小児科で検査しインフル・コロナ陰性と言われましたが、それではなんだ、とは言われていない。のどを見たら真っ赤で扁桃炎で、溶連菌を疑う所見。検査ですぐ陽性。二日前、のど赤いっていわれませんでした?と聞くとのどを診てもらってないと。私びっくり。熱の出ている子どもののどを診ない小児科医なんているの???二日前でものどを診たら、インフルコロナなんかより溶連菌の検査で診断がついたかもしれない。

咳をしているのに聴診しない、という医者もいるみたいで。耳鼻科の先生がときどき聴診せず処方した薬を見たら喘息の薬ということがあります。いやいや、聴診で喘鳴なければ喘息わからんやろ、と思いますが、耳鼻科だから聴診しなくても文句はいえない。ちゃんと聴診してくれる耳鼻科の先生もいますけど少数派。

小児科でも、熱もなく、腹痛だけとか便秘とか、そういうときは私ものどを診ないことありますけど、熱と呼吸器症状あれば、のど診て聴診は必須です。というかそうしないと診断できないです。

熱も、何度くらいの熱が、一日でどう変動してどのくらい続いているか、それによって疑う疾患が違います。溶連菌とインフルエンザの熱の経過は違うのです。アデノウイルスも特徴的な、朝下がり夜40度になる、みたいなギザギザの熱が続きます。受診の際は、熱の記録を熱型表にしてお持ちください。私は熱型表を前において、親御さんに症状を聞いて、だいたいの検討をつけて診察をし、検査をします。毎日シャーロックホームズみたいですよ。

さあ、これで連休になって、また感染症が増えるのか、どうでしょうか。

春のアレルギー外来

世間では春休みのようです。1時間かけて、御堂筋線・JRや帰りは新幹線を使って遠距離通勤をしていますが、3月半ばから、滋賀から大阪に遊びに行く小・中・高校生の男の子女の子の集団が通勤電車の座席を占めていて、座れません。京都駅・新大阪駅も、大きなトランクをひいた若者や家族連れの旅行者で歩くのも大変、新幹線のホームは、英語でない外国語が氾濫して外国人旅行者の集団でいっぱいです。普通はすぐに座れる新幹線自由席も探さないといけません。通勤だけで疲弊しています(涙)。

春なので、高校、大学の入学・卒業や就職など、長年アレルギー疾患で通ってくれて来た患者さんたちが、立派になって御礼や報告に来てくれます。うれしいことです。今は治療法が確立し、乳幼児のアトピー性皮膚炎も食物アレルギーも早くによくなるし、喘息もちゃんと治療したら子どものうちによくなることが多いのですが、重症だったお子さんたちは15歳超えても通院が必要な方も多かったのです。問題は、多くのアレルギーの患者さんに対して、アレルギー専門医が少ないことです。アレルギー科を標榜していても専門医がいるのは30%足らず、小児科医でアレルギー専門医の資格を持っているのは全国で1000人ちょっとと言われています。今でもときどき、ちゃんと長期管理ができていない喘息児がやってきてちょっとびっくりします。

年度末なので、食物アレルギーの学校生活管理指導表を求めて受診される患者さんが多いのですが、1年ぶりとか2年ぶりとかに受診される方も多く、以前に少しずつ食べるものを増やしましょうねーと指導したのにまったく食べていない方も多いです。食物アレルギーは、少しずつ食べていって体に免疫をつけていくしか、食べられるようにならないのです。アレルギー専門医ですので、安全で食べていける方法を詳しくお話しているのですが、2-3か月ごとに経過を報告してくれる患者さんは確実に食べるものが増えますが、1年ぶりの方はほとんど増えていません。日々食べていく努力をするのは大変なことなのですからそれもわかりますが。まあ、卵や乳や小麦、食べられないと不便ですが、別に食べたくないなら無理せんでもいいよーと言っています。

人それぞれの春。

 

ペクチンアレルギー

今年の2月は寒かったり春のように暖かかったり、季節の変化が激しいですね。

ウイルスの流行は、本来は気温によって変化するものでした。例えばインフルエンザウイルスは低温・乾燥で増殖しやすいので、寒くなってくると流行が始まり、春には終息する。手足口病やアデノウイルスは逆に夏の感染症のイメージでした。そしてある程度流行すると抗体保有者が増えて、次の感染を集団的に予防できると。しかし2020年からコロナの感染で人々が引きこもるようになり、自然な季節の変化によるウイルスの増減がなくなり、病気の流行がなくなり、抗体もできなくなり、その反動で翌年は大流行になったりともうめちゃくちゃ。まったく予想がつかなくなりました。

この2月はインフルエンザBが流行中で、溶連菌もまた増えています。ウイルスと違って抗体ができないので、溶連菌の感染を繰り返す人も多くなっています。実際の現場では、患者さんの症状と熱型と診察所見で、必要な検査をして診断をつけていきます。まあ、なんの検査もしないような診療所もあるみたいですが、私は医者として自分が納得して患者さんに説明して安心してほしいので、検査をして処方をします。もし診断されなくて放っておいても、インフルエンザもコロナもアデノも溶連菌も、ひどい合併症になる確率は少ないのですが、インフルや溶連菌は薬があるし、アデノやコロナも病気の見通しを話すと患者さんも安心するかなあと思います。幸い今のところ、入院を勧めるような患者さんはほとんどなくすんでいます。

先日、紹介で来た10歳の男の子、もともとカシューナッツのアレルギーがあるのですが、お菓子と金柑を食べてアナフィラキシーになりました。お菓子にカシューナッツが混じっていたのかと考えましたが、文献を調べると、カシューナッツアレルギーにペクチンアレルギーが合併することがあると報告がありました。ペクチンとは、植物に含まれる多糖体で、かんきつ類やリンゴの皮の内側にありますが、ジャムやスムージーなどとろみをつけるのに使われています。血液検査では検査項目がありません。そこで、プリックTOプリックテストといって、怪しい物質そのものを皮膚にのせてひっかいて反応を見る検査をすると、金柑の皮の内側の部分と、市販のペクチンの粉を溶かしたもので強陽性が出て、ペクチンアレルギーが診断できました。最近は、変わった食物アレルギーが増えています。やれやれ、わかってよかった。

3月は、この春はどうなりますか。暖かくなり、花々も咲き、日差しも降り注いで、心が晴れるといいなあ。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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