今年も終わりです・・・

今年は秋から冬にかけて、マイコプラズマやウイルス性の肺炎が小学生を中心に流行しました。咳だけひどく、長く続くものから、熱が夜に上がって1週間も続くもの。胸部の聴診をしても異常がないのに、レントゲンをとってみると、肺炎だったり、気管支で痰が詰まって空気の入らない無気肺という状態だったり。これは、細菌以外で起こる、非定型肺炎というものの特徴です。薬も、今までの抗菌剤が効かなくなったり、ウイルス性ではまったく効かないので、よくなるのを待つしかなかったり。何人かはしかたがなく、入院をお勧めしました。でもまあ、何とか皆さん、熱が下がったり、診断をつけてお薬を出したりして最終日を終えてほっとしました。
今年はまた、「食べて治す」ということにも多く取り組んだ年でした。アレルギーの検査値のみで食物除去を指示する、というような医師は10年前に比べて減っていますが、いまだに難しいのは、「食べてみないとわからない」「食べるものによって違う」「人によって違う」ということです。
食品のたんぱく質はアレルゲンになる可能性はありますが、普通は、年齢とともに、消化吸収の能力や腸管で働く免疫力などによって、からだが受け入れる、「経口免疫寛容」という仕組みが働き、食べられるのです。アレルギーがあっても、微量のたんぱく質から少しずつ摂取してからだを慣らしていく「経口免疫療法」で多くは食べていくことができます。食物アレルギーの出方は、年齢によっても違うし、RAST値でも違うし、食品のタンパク量や加熱、混ざり方によっても違うので、ものすごく専門的経験がものを言います。
乳児で、RAST値は少ししかないので、医師からちょっと食べてみ、といわれて卵がゆでアナフィラキシーを起こした子もいるし、同じような数値で1歳過ぎて今まで食べていたのに急に乳の完全除去を言い渡された子もいる。3歳以上になるとRAST値関係なく食べられることも多く、小麦のRASTが100以上でもばんばんうどん食べてる子もいれば、10そこそこの数値でもうどん切れ端食べて1時間後に咳とじんましんが出る子もいる。はっきりいって食べてみないとわからないので、いかに安全に何を食べていくか、というのは、タンパク量も加味した詳細な指導が必要です。卵の数値が下がってきたので、卵の入ったものを少しずつ食べてみて、と医師からいわれたが、具体的に何をどれだけと言われないので、お母さんがイメージした卵の入ったもの、がマヨネーズで、1匙で蕁麻疹がでちゃった。マヨネーズは生なので、卵加工品の中でも最後にすべき食材なのですが、それは言われないとわからないよね。
いろんなびっくりしたことも多い1年でしたし、たくさん食物負荷試験もしました。診察室に入ってきて、あれも食べられた、これも食べた、とうれしそうに親子で報告してくれる患者さんたちが増えてきたことがよかったことです。みんなからも、かわいいお手紙や折り紙などなど、プレゼントありがとう。またこれらを励みにして来年も頑張ります。皆さまよいお年を!

喘息児の自立と支援

近畿各地の紅葉も盛りの頃です。11月21、22日は奈良で日本小児アレルギー学会学術集会に参加しました。学会長が天理よろづ病院の南部光彦先生で、彼は京大の先輩です。小児医療にものすごい熱意を持っている先生で、その思いのこもったプログラムや人選で、とても盛り上がりました。
私は、「喘息児の自立と支援」というシンポジウムの座長を仰せつかりました。
子どもの喘息は、7割が3歳まで、9割が6歳までに発症します。そして多くの患者さんは、よくなっていきます。薬がなくても発作が出ない状態を「寛解」と言いますが、喘息が良くなるすなわち「治癒」するというのはなかなかハードルが高くて、5年間寛解状態で、しかも呼吸機能や気道過敏性が正常である、ということになっています。半数以上の子どもたちは成人するまでに寛解しますが、成人してから再発するひともいるのです。私は必ず患者さんが6歳以上になると、呼吸機能や呼気NOによる気道過敏性の検査をし、薬を減らして治っていけるか、成人喘息に持ち越すタイプかを鑑別していきます。それが喘息治療の基本になっています。
成長するにつれ喘息の子どもたちは、精神的にも生活上も自立していくわけですが、それをどう支援するか、というのが今回のシンポジウムの課題でした。ずっと小児科で治療を続けてきて、どのタイミングで内科に引き継ぐかというのは大きな問題です。シンポジストは、小児科医、養護学校の先生、NPO患者団体の代表、それから心理学の先生でした。
進学や就職で実家を離れる時が、病院も変わり、小児科から内科に移行する時期ですが、かならずしもスムースに継続できないということ、初めての土地で一人暮らしになると、困った時の相談できる場所や医療機関が見つからないこと、自立をうながすにはもっと子どものころから困難を乗り越える力、自分はちゃんとやれるという自信をつけておくような心理的トレーニングが必要であること、という内容が提示され討論されました。
なかなか難しい問題です。お母さんに話して説明をするということが多い小児科医ですが、3歳以降になったら、子どもたち自身に話しかけ、ちゃんと説明をしようと改めて思ったことでした。

秋も深まると・・・

10月になると、いろんな風邪が流行し始め、喘息発作も増えて来ました。今朝も朝から風邪、咳、ぜいぜい、という患者さんがたくさん来られました。単なる風邪もありますが、喘息発作もあり、のどから出るひどい咳き込みのかぜ、マイコプラズマ感染などいろんな状態の患者さんがいます。それを聴診や咳の状態や検査で、仕分けして、適切な薬を処方しご家族に説明するのが私の仕事です。
先週日本小児呼吸器学会が倉敷で開催されました。会長の尾内一信先生は川崎医大の教授で、私が国立岡山病院で研修医の時、指導医でお世話になった先生で、いわば私の兄貴分です。感染症の専門家で、マイコプラズマやクラミジアという、非定型性肺炎を起こす病原体の、日本ではトップクラスの専門家です。実はこういう病原体は喘息発作にも関連し、10年位前に、共同研究をしたことがありますが、喘息発作の一部はこのような病原体の関与があると考えられています。今回の学会では、気管支喘息のセッションの座長もさせて頂いたのですが、乳幼児にぜいぜいいう気管支炎をおこすRSウイルス(流行始まっています!)に加え、最近検査が可能になったヒトメタニューモウイルスによる肺炎や喘息発作もわかってきて、意外とそちらの方が重症化する、という研究発表もありました。
子どもの外来診療での70%は呼吸器感染です。熱と咳・鼻水があったとき、その子どもの年齢や環境(保育所に行ってるか兄弟がいるかなど)、咳の性状、聴診所見、吸入前後の聴診所見の変化、検査結果など、総合的に診断しなくてはなりません。今年はマイコプラズマの感染も多く、適切な薬の処方が必要です、
ぜいぜいを何回も繰り返しているのに喘息と診断されず喘息治療が適切に行われていない患者さんがいれば、喘息と言われてステロイドの吸入薬をどんどん増やされているのに治らない年長児もいます。小学生以降であれば、呼吸機能や呼気NO(気道過敏性)の検査で、喘息かどうかの判別は比較的簡単です。呼吸機能もNOも調べられず、結局は喘息ではなく耳鼻科疾患だったり、胃食道逆流だったり、そのほかの外科的疾患だったりした患者さんも多いのです。小児アレルギーの専門医であれば鑑別をするのは常識なのですが、なかなか呼吸機能に関する検査は一般小児科では普及していません。
子どもたちが秋から冬にかけてかぜをひいたとしても、呼吸の苦しい状態なく、元気で過ごしてほしいと思います。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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