論文と野菜料理

今年は猛暑でしたが、やっとピークを越えたようで、朝夕は少し過ごしやすくなりました。
今年の夏休みはどこへも行かず、たまった家事と、平日にしかできない雑用をしながら、学会誌に出す論文の書き直しをしていました。私は小児科医でアレルギーを専門にしていますので、たくさんの子どものアレルギーの患者さんの診療にあたっています。ちゃんと診察して診断して説明して、治療をしてよくなっていただくのは開業医として最低限の仕事だと思っています。開業医の仕事だけでも忙しいのですが、専門医なので臨床研究もやらねばと思い、研究成果を論文に書いているのです。一昨年から昨年にかけてやった長期研究をまとめてこの春投稿し、今その書き直しをしているのです。一日中朝から夕方まで診療に追われ、帰れば家事もあるので、集中して論文を書いたり、関連の文献を読んで勉強するのは休みの日しかありません。今日の日曜はその最後の書き直しをしてやっと終わりました。
休日は家事もあります。私も家族も野菜が大好きですが、野菜は洗ったり刻んだり下ごしらえに時間がかかるので日頃は焼いたりいためたりすぐできる肉や魚が多く、野菜はサラダくらいです。今日はチャンス、朝から買い出しをして、2時過ぎまでに論文をかたづけて、遅い昼ごはんのあと、音楽を聞きながら以下の野菜料理を作りました。1)ヴィシソワズ、ジャガイモの冷たいスープです。ジャガイモを皮むきして玉ねぎと一緒にコンソメスープと20-30分煮込んで柔らかくなったところでミキサーで混ぜて、牛乳と生クリームと塩こしょうして冷蔵庫で冷やす。2)ピーマンを細く千切りにしてラップをかけて電子レンジにかけてしなっとしたところで釜揚げしらすをまぜて醤油をたらす。簡単!最近しらすはマイブームで、3)水菜をきざんで、しらすと温泉卵と生わかめと刻みのりをのっけて和風ドレッシングをかけて(醤油とオリーブオイルでもいい)まぜる水菜シーザーサラダ。4)豆腐を崩して、刻んで水にさらした白ネギと納豆、しらすをかけて醤油とごま油をかけて食べる。5)海老ときのこのアヒージョ。むきえびとマッシュルームとズッキーニを、にんにく・アンチョビ・とうがらし・月桂樹の葉をいれたたっぷりのオリーブオイルで20分くらい煮て塩コショウ。 この5つを同時進行でつくりました。どれも作り置きして冷やしておけるので便利。今日のバックグラウンドミュージックは福山雅治の「魂リク」というカバーアルバムでした。いいアルバムで最近のお気に入り、「元気を出して」「Raining」「ZOO」など、息子と一緒に歌ったりします。私もギターを習って弾き語りってしてみたいなあ。
さて冷蔵庫は野菜料理でいっぱいになりましたが、私の論文ははたして学会誌に載せてもらえるのでしょうか。

食べれば寛容、皮膚からはアレルギー(2)

前回のピーナツアレルギーの続きです。
そこで、ラック先生たちのグループは大掛かりな臨床研究をしました。2015年の2月に一流の医学雑誌に発表されて、なかなかショッキングでした。
4か月から11か月までの乳児で、すでに卵アレルギーがあるか、ひどい湿疹があるか、あるいは両方あるか、という、つまりアレルギー体質を強く疑う乳児を640人集めたのです。そして二つのグループに分けて、ピーナツを完全に食べないように除去する群と、逆にピーナツの入った食品を、一定の量以上離乳食に与える群としました。そしてそれを5年間続け、最後にピーナツを実際に食べさせる負荷試験をして、ピーナツアレルギーを診断したのです。そうすると、ピーナツを除去していた群では16.8%がピーナツアレルギーになったのに、ピーナツを食べていた群では4.7%のピーナツアレルギーの発症で、食べていた方がピーナツアレルギーを起こしにくかったのです。つまり、食べていると免疫寛容といって、体が受け入れる仕組みがいろいろ働いて食物アレルギーを予防するのではないかという仮説を実証したのでした。
長い間小児科医は、卵アレルギーがあるからアトピー性皮膚炎になるのだ、と卵などの食物制限をしてきたのですが、今や完全に見直しの時期に入っています。アトピー性皮膚炎があるから、卵のアレルギー値が増えるので、だからと言って実際に卵を食べてアレルギー反応を起こすとは限らない、ということらしいのです。早くから乳児の湿疹を治療して、離乳食でいろんなものを早く食べさせるようにしていけば、現在増加している食物アレルギーもへっていくのでは、と期待されています。
さて、暑い暑い毎日です。子どもたちも夏休みに入りました。暑さに負けず、楽しい休暇を送って下さいね。お父さん、お母さん、大変ですが頑張ってください。子どもはあっというまに大きくなって、あんなに大変ででも楽しかった夏の海水浴やプールや水族館や旅行が、いつのまにかなくなってしまいます。大変だーくたびれた―といいながら子どもたちと汗だくになる日々を今のうちに楽しんでください!

食べれば寛容、皮膚からはアレルギー(1)

アレルギーの病気は、もともとアレルギーを起こしやすい体質があって、それにアレルギーを起こす物質(アレルゲン)が体内に入ってきて病気が起こるとされています。アレルギーの体質とは、アレルゲンに対しIgEという抗体を作りやすいことで、これは遺伝的に決まっています。でも遺伝因子があっても、アレルゲンを身の回りからなくす、アレルゲンが体内に入らないようにすれば、IgEは作りにくいし、アレルギー反応も起きないのです。
ですから、花粉症の人はアレルゲンである花粉を体内に入れないようにマスクやメガネをする、ダニアレルギーのある喘息の人は、掃除をして身の回りのダニを減らして発作が起こらないようにする、というのが基本です。では食物アレルギーは?当然アレルゲンである食品を食べないようにしてIgEを作らないようにする、またアレルギー症状が起こらないようにする、というのが基本です。しかし最近、食物アレルゲンは食べる事だけが問題ではないという科学的証拠が増えて来ました。
アメリカではピーナツアレルギーが多く、ピーナツを食べて起こるアナフィラキシーも多いのです。そこで、ピーナツアレルギーを予防するために、アレルギー家系で母が妊娠したら、母乳をあげる母も生まれてきた赤ちゃんも一切ピーナツを摂取しないようにしたのです。しかし、結果は、母も子もピーナツを食べていない場合でも子どものピーナツアレルギーは発症し、よく調べると、家族のピーナツ摂取が多いほど多かったのです。また、ピーナツオイルを使ってベビーマッサージをした赤ちゃんの中から多くピーナツアレルギーが発症したこともわかりました。それから、遺伝子背景が同じユダヤ民族でも、アメリカではピーナツアレルギーが多く、離乳食で初めからピーナツを与えるイスラエルではピーナツアレルギー患者が少ないことも報告されました。
どうやらピーナツは、皮膚から入ってIgE抗体を作りピーナツアレルギーとなるが、口から食べていると逆にアレルギーになりにくいという事らしいのです。もともと食物が消化管から入ると、消化機能や免疫機能が働いて免疫寛容といってアレルギーを起こさず受け入れる、ということが分かっていました。
そこで、食物アレルゲンは、口から入ると経口免疫寛容となるが、皮膚から入るとIgEを作ってアレルギーになるのではないか、という仮説が10年ほど前にイギリスのギデオン・ラックという先生から出されたのです。これは、最近のアレルギー関連のトピックスのひとつでした。(以下来月に続く)

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