台風ウエディング

10月11日~13日にかけて日本を縦断した台風19号はなかなか強大でした。実は不本意ながら、この3連休、私はこの台風の追っかけをしていました。
もともと、10月12日日曜日に、私の姪が沖縄の石垣島で結婚式を挙げることになっていたのです。彼女は熊本生まれ熊本育ちですが、琉球大学に進学し、産婦人科医になって今石垣島で働いているのです。10月半ばまで、沖縄は海で泳げて、いい季節だからと半年前からウエディングのお誘いがあったのでした。
しかし!最大級の台風がこの連休を直撃。11日土曜日休診にして、朝から博多に向かい、兄夫婦や叔母夫婦などとともに、正午の石垣島直行便に乗ることになっていました。同じ沖縄でも石垣島は本島と400kmも離れており、この日沖縄本島は台風の直撃を受け、那覇空港は朝から全日閉鎖。新郎の両親は沖縄に住んでおり、石垣に行けないとのこと。しかし博多発石垣行きは、上空で直陸不可能なら引き返します、との条件付きで機上の人となりました。私らも行かなかったら、新郎新婦は二人だけで結婚式なんて、かわいそうじゃないですか!台風に向かって石垣島へ向かい、両方の翼がかぜにおされてわさわさ揺れましたが、なんとか着陸。飛行場の吹き流しが、ゆれているのではなく、真横にピンとはためいていました。
かぜぼうぼうの石垣島でした。その夜は本島を台風が通過し、400km離れた石垣でも雨風ごうごう。でも翌日のウエディングは風もおさまり、姪っ子は綺麗で幸せな花嫁でした。さあ、台風は通りすぎたし、那覇空港は再開になったし、台風はまだ九州なので、今のうちに大阪に帰ろう!と夕方飛行場に向かうと、なんと、石垣から関西空港への直行便が欠航。飛行機のやりくりがつかなかったらしい。なくなくホテルにもどりもう一泊。
翌日13日は、台風は九州から関西へ。台風が到達する前に帰らねば!朝いちの飛行機で那覇空港に飛ぶ。飛行場は、キャンセル待ち、欠航便変更のお客であふれていました。那覇から昼過ぎの便で伊丹へ。よかったー、台風を追い越したよ!ところが京都駅で琵琶湖線に乗りつごうとすると様子がおかしい。だいたい駅に人が少ない。掲示パネルが消えている!駅員さんに聞くと、ああ、今止まっている電車が米原行き、本日の最終です。え、まだ3時半だよー?なんでも大型台風に備えてJR関西全域4時ころから全面運休にしたらしい。とにかくなんとか最終電車に飛び乗って帰宅しました。
台風に向かっていき、台風と競り合って帰ってきた連休でした。ウエディングでなかったら石垣島なんてキャンセルでしたが、おかげで貴重な経験でしたし、姪っ子は、一生誰からも忘れられない人生の門出ができました。
帰ってきてからも、台風の影響で、ずいぶん週末からの喘息の発作の患者さんが増えていました。でもみんな、がんばろうよ!

喘息もアトピーも治そう!

9月になって朝夕の冷え込みが始まると、喘息発作のシーズンです。今年も第2週目からかぜひきさんや発作を起こした子がどっと増えました。うちのようにたくさんの患者さんを診ていると重症の方も多く、抗ロイコトリエン剤を飲み、ステロイドの吸入をしてきっちり予防していても、風邪をひいたり運動したりすると大きな発作になります。9月には4人も喘息発作で紹介入院していただきました。何度も入院したことのある子ばかりです。入院は大変ですが、外来で薬を増やして、家で飲み薬も吸入もマックスにやってもよくなる傾向がなければ、入院して集中的に治療したほうが早く楽になります。体内の酸素が減ってきたら悪化の兆候ですから家でがんばるのは危険です。しっかりよくして退院したらまたいちから治療に取り組みましょう。どんなにひどくてもちゃんと治療していれば、子どもの喘息は、大きくなるとよくなっていきます。前にここで書いた、剣道をやってるK太郎君もなんど入院したことでしょう。一番の先輩は昨年大学院を卒業して就職したT君、10回以上喘息で入院しました。4歳のころ半年間入院して治療をした女の子は大学を出て図書館の司書さんをやっています。主治医は、本人とご家族のマラソンの伴走者みたいなものです。今は喘息の治療で日々大変でも、必ず楽になる日は来るので、それまでなお母さんやご家族に寄り添い励ましたいといつも思っています。。
喘息でもアトピー性皮膚炎でも、アレルギー専門でない医師の多くはあまりはっきり診断名をいわないようです。たしかに、子どもの場合はかぜをひいてぜいぜいするだけで喘息でないこともあるし、かさかさしてかゆくてぽりぽりかくだけではアトピー性皮膚炎でないこともあります。診断は難しい場合がありますが、でもどちらもちゃんと診断基準があり、治療のガイドラインがあるのです。ちゃんと診断の根拠を示して病名を告げたほうが、ご家族も覚悟を決めて、ちょっと時間のかかる治療に気長に取り組むことができます。発作のない毎日、かゆくない毎日にして病気自体をよくしていったほうがいいと私は思います。喘息とかアトピー性皮膚炎とかいうと、一部のお母さん方は、ショックを受けて、「だって治らないんでしょう?」と悲痛な表情。そういうイメージなんでしょうか、一般には?私ら小児科のアレルギー専門医は、喘息もアトピー性皮膚炎も治るぞ、治そう!と思って日々診療しているのですけどね。

つらい夏でした

夏休みもいよいよ終わり。最近は、8月の最終週から始まる学校や幼稚園も多くなり、実はお母さんたちはほっとしているかもしれません。
夏休みでも学校の先生はもちろんずっと休んでいるわけではなく、研修や勉強会など、子どもたちの授業に追われる日常ではできない仕事もあるようです。この夏は、豊中市の公立の小学校と、中学校の研修に講師として呼ばれて、食物アレルギーのお話をし、エピペンの講習もしてきました。
エピペンが保険適応になって普通に処方できるようになると、食物アレルギーのある子どもで、万が一誤食できつい症状が出る可能性がある場合や、学校行事で宿泊がある場合は、エピペンを持っていくのが普通の治療になってきました。注射なんて医療行為、学校でしなくてもいいじゃないか、というのが一般の学校現場での雰囲気でしたが、一昨年学校給食の誤食で小学生が亡くなった事例があったのをきっかけで、先生方が危機感を持ったり、関心が高まったりしてずいぶん雰囲気が変わってきました。あちこちでエピペンの講習会が開催されたり、校長先生や養護の先生だけでなく全員の先生が、食物アレルギーの話を聞きたい、知識を深めたい、といってくださるようになったのは本当にありがたいことで、食物アレルギーの子どもたちを守る力になると思います。
アレルギーだけでなくなんでもそうですが、知らない、知識がない、正しい対処法を知らない、というのは不安で、不安があると正しい対処はできません。世の中に怖いこと、考えたくないこと、知りたくないこと、できれば目をつぶってないことにしたいことっていろいろあるのですが、やはり、実際に我が子や自分の生徒のことであれば、向かい合うしかないのです。
この夏は、夏休みの初めから、小学生の女の子が中年男性に誘拐され監禁されたり、女子高校生が同級生を殺害したり、継父から虐待され自殺を強要された中学生の男の子が首をつって自殺したり、最後の方では自然災害で多くの子どもたちの命が奪われたり、小児科医としてはほんとにつらい夏でした。これも目を背けることなく、小児科医としてできることをして、なんとか子どもを取り巻く環境を改善していかねばならないということです。また新たな課題をつきつけられた気がします。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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