今月の独り言
4月の外来は・・・
4月の外来は患者さんが多くて、受診できない、予約できない、待ち時間が長いなどの患者さんのご不満があるかと思いますがごめんなさい。医者も生きている人間なので、どうしても限界があります。
4月は、アレルギーの患者さんも多いのですが、保育園に行き始めた小さい子たちの小児科的病気も多いです。1歳前後の子どもたちが保育園デビューすると、たいてい2週間以内で風邪をひきます。鼻水や咳くらいならいいのですが、38度くらいの熱が出ると保育園から呼び出しがかかるし、預かってもらえない。今はウイルス性の胃腸炎もぱらぱら流行っていて、吐いたり下痢したりもします。いつもお母さんたちに言うのですが、熱があっても、咳をしていても、まあまあ機嫌がよくてまあまあ食べられて眠れていれば大丈夫。熱がなくても症状がなくても、機嫌・食欲・睡眠がよくなければ大きな病気のことがあります。
先日は1歳のお子さんがずっとおえっと咳込みがつづいて、何かのどにあるものを出そうとしているのです。何かがのどにひっかかっているようです。診察した海老島先生がファイバー検査で取り出してくれる病院に紹介しようと考えていたら、その子の舌のうえに何かが見えて、手でぱっととりだしたら、缶飲料に貼ってあったプラスチックのシールだったんですって。0歳-2歳くらいの子はなんでも口にいれますので要注意。突然咳込みが続いたり呼吸がおかしくなったら誤嚥を疑います。ボタン式電池は要注意、食道や胃に穴があくこともあります。
あわただしい新学期、新年度、みんな元気で。5月の長期連休になりますが、うちも4月28日から9連休です。皆さん元気で楽しくお過ごしください。
食べられるようになるには・・・
こどもの食物アレルギーの多くは乳幼児期でよくなっていきます。赤ちゃんの時に卵を食べて赤くなった、ミルクを飲んで吐いた、などあっても、大きくなると自然に食べられるようになっていくことが多いのですが、それには、あまり気にせずにいろいろ食べていることが前提です。怖がって、一切食べないとか、検査をしてIgE値があれば皆除去しちゃうと、本当に食べられなくなってしまうのです。食物アレルゲンは、食べることによって免疫をつける(経口免疫)ことができることがこの10年くらいで実証され、2017年に日本小児アレルギー学会が、「アトピー性皮膚炎のある乳児は、6か月までに皮膚をきれいにして、卵を微量から摂取することで卵アレルギーを予防できる」という提言を出しています。
食べた時の症状が強い患者さんや、IgEがすごく高い患者さんには、食物負荷試験をします。微量の食品を医療機関で食べてみて、本当に症状が出ない量を確認するのです。ここでパスしたら、お家で少しずつ増やして慣らしていくのです。専門医がちゃんと量や間隔を指定して指示するのを経口免疫療法というのですが、重症の食物アレルギーの患者さんが食べられるようになるには、いまのところこれしかありません。
ただ、週に3回、量を測りながら、アレルゲン食品をきちんと食べていくことはそんなに簡単ではありません。食べて2時間は、外出や入浴を控えて家で観察しなければならないし、体調が悪いと同じ量でも症状が出たり、手持ちの薬で治まらずに救急に行くこともあります。それだけ、精神的にも時間的にも負担のある、リスクも伴う方法です。でもこれしかないのです。とくに、働いているお母さん、保育園に行っている子どもたちは生活に時間的余裕がなくて、忘れたりやめちゃったりすることも少なくありません。私の仕事のひとつは、2-3か月に1回、お母さんにその進捗状況を聞いて、食品の増やし方や種類で、やりやすく安全な方法を提案し励ますことです。
それから、年長のお子さんになると、「食べない」ことがあります。卵や乳は食べなれていないとおいしいと思えず、食べて何らかの違和感を感じるのか、「食べてくれない」、「嫌がる」と訴えるお母さんもいます。食べて増やして慣らしていくやり方なので、食べなければ始まりません。怖い思い、不安な思い、いやな思いをしながら週3回食べるのが大変であれば、経口免疫療法をせずに、「食べない生活」を選ぶのも一つの道かと、最近は考えるようになりました。このいろんな食べ物があふれている時代に、卵や乳が一切食べられないというのは不便だし、誤食で重い症状が出るリスクもあるのですが、それなりに子どもも大きくなるにつれて、食べられないものを認識して、自分の身を守る知識と技術をもつしかありません。友人と外食に行っても、自分の食べられるものを選んで注文できるようになり、何か異常があれば薬を飲んでエピペンを自己注射する、救急車を呼ぶ、などです。
家族の努力で経口免疫療法を続けたたくさんのこどもたちが、何年もかかって食べられるようになって卒業していきました。それは専門医としてうれしいことですが、食べない、食べられない、という、経口免疫療法にのれない子どもたちと家族をどう支えていったらいいのか、まだまだ考えなければならないことがあります。
アレルギーって??
私は小児科医でアレルギーの専門医ですから、こどもの普通の病気も診ながら、アレルギーの病気を主に診断・治療しています。
アレルギーとひとことで言っても、いろんな病態があるのですが、患者さんの皆さんが使っているアレルギーという言葉は、なんかよくわからない、なかなか治らない、体質的なものなので治らない、というようなニュアンスが含まれているように思います。鼻水がつづくから、アレルギーかしら、花粉症ですか、とか、咳が続くからアレルギーと思うとか、皮膚にぶつぶつやかゆみがあるのでなんのアレルギーか調べてください、とか。医者のほうも、原因がはっきりせずに長引く咳や鼻水やかゆみがあるときに、アレルギーかも、というと患者さんが納得するので、なんか逃げ道みたいに使われることもあります。
アレルギーの代表であるⅠ型アレルギーは、アレルゲンに対するIgE抗体を持っていて、それが働いて症状がでることで診断できます。
鼻水やくしゃみの、炎症のともなわない慢性症状に、ダニや花粉の抗体値の上昇があれば、アレルギー性鼻炎の可能性があります。ダニやイヌの抗体値が高い子が、ほこりっぽいところやイヌのいる家に行って咳をしたりぜいぜいしたりすれば、ダニやイヌのアレルギーによる喘息でしょう。しかし、風邪の鼻水が長引いて、鼻のかめない小さな子が副鼻腔炎になって長期化することもあるし、まったくアレルギー体質のない子でも、気道が過敏であれば喘息になるのです。
アトピー性皮膚炎については、最近はアレルギーの関与が少ないことが分かってきています。アレルギー体質があって、皮膚が過敏なひとにアトピー性皮膚炎が起きやすいのは確かですが、卵や乳やダニの抗体価が高くても、そのせいで皮膚の湿疹やかゆみが起きているとは限りません。皮膚の乾燥や、温まることや汗でかゆみは起こりますし、皮膚の擦れ合う場所や、乳児がよだれや指しゃぶりがあると口の周りなどに湿疹ができることもあるし。皮膚の中の炎症が続けば、ちょっとしたことで赤みもかゆみも繰り返すので、ちゃんとステロイドを塗って皮膚の炎症を治すことが治療の第一歩です。
よく、じんましんが出るので原因を調べてほしいと来られる患者さんがいらっしゃいますが、アレルギーの検査で原因がわかることはほとんどないです。子どもで多いのは、感染症で免疫状態が変わっているとき、体調が悪いときで、あとは温暖じんましん、寒冷じんましんという温度差によるもの、汗や運動や、掻くことによって出るものなど、皮膚そのものへの刺激がじんましんを起こすのです。
そういうわけで、アレルギーや病気の仕組みについて説明してると時間がかかります。患者さんの多い時期になっています。お待たせしたり予約が取れなかったりしてすみません。休み返上で頑張っていますのでご理解ください。