今月の独り言
暑い夏でしたね!
暑い暑い夏でした。もう8月も終わるというのにまだ厳しい暑さです。
この夏は、異常気象なのか、思わぬ大地震から始まって、大雨や台風や、全国に大きな被害がありました。小児科の病気のほうも、普段は秋から冬に流行するRS ウイルスが7-8月に流行し、保育園に通っている0-1歳児が多く気管支炎や肺炎になり、当科でも2か月で7人も入院をお願いしました。本来夏には発作が少ないのに、幼児・小学生の喘息発作も多かったです。子どもたちの病気にもなにか異変がおきているようです。
今日は地元の中学校の先生方の研修会に講師で呼ばれて、食物アレルギーの話をして、エピペンの実技指導をしました。開業した12年前、小学校に入学する子どものエピペンについて、学校の理解がなく、受け入れがひどかったことを思い出します。食物アレルギーなんて個人的な事情だから、とか、注射を打つなんて医療行為は学校ではしません、エピペン持ってくるのは自由だけど自分で保管して自分で打ってください、などなど・・・どれだけ患者さんの学校の先生と個人面談をして、理解を求め、エピペンを打ってくれるようにとお願いしたことでしょう。
それからすると、隔世の感があります。学校の先生方の仕事や業務が多く、過重労働が問題になっているなか、今日の研修でも、先生方は熱心に聞いてくださいました。どんなことも、正しい知識を得て、理解することから始まります。子どもたちにとって、学校は大切な生活の場です。安全に楽しく学び、生活できるように、先生方のご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。
7月のぜんそく
気管支喘息はいろんなきっかけで発作が起きます。子どもは、風邪をきっかけに発作が起こることが多いのですが、そのほかにも季節の変わり目、台風などの気圧の変化、冷たい空気を吸い込むこと、運動など、いろんな原因があります。本来7月は発作の少ない季節なのですが、今年は大雨があったり猛暑だったり台風がきたりなど気候がおかしいのか、なんだか発作を起こすウイルスが流行っているのか、発作で受診する患者さんが多いです。
7月は9人の患者さんが、ウチから紹介入院したのですが、皆呼吸器がらみ。10か月から4歳までの小さい子ばかりです。純粋な肺炎は2人だけで、7人には喘息があります。喘息に肺炎を合併したのが3人。なかには、初めて受診された喘息で、ちゃんとした予防治療がされておらず、発作がひどくて入院になった子が2人いました。
7月28-29日と福岡で日本小児臨床アレルギー学会があり、35年前この会の前身である難治喘息研究会を始めた大先輩の先生方の話を聞きました。ステロイド吸入のなかった時代、ほんとに子どもの喘息の重症はひどかった。夜に眠れず起き上がって空気が入らない息をして発作に苦しむ子がたくさんいて、重症な子たちは、施設入院療法といって、親元を離れて病院で生活し学校に通っていたのです。われわれより年上の小児科医はたいていひとりかふたりは患者さんを喘息で亡くしています。たとえば1970年には20歳未満で喘息死した人は740人もいました。2010年以降は喘息でなくなる子どもは0から数人になっています。
昔は喘息の子たちは発作で学校を休み、体育は見学し、運動会や遠足は行けず、という生活でした。今はちゃんと長期管理をして、学校や幼稚園も休まず、好きな運動をして思いっきり遊ぶ、当たり前の生活ができます。皆さん、夏休みもいっぱいあそんでね。
追記:7月30日の外来では、クループと、喘息+RS肺炎の患者さん二人が入院になり、7月の入院数は11人になりました。夏なのにRSウイルスが流行しており、0-1歳で熱が続き咳がだんだんひどくなる時は要注意です。
テレビドラマの医者になりたい?
最近テレビのドラマでは医療ものがはやりで、よくヒットするのだそうです。シリーズ化されてるのも多いですよね。私は、噂を聞いてときどき見ることもあるのですが、やはり見ると自分の知ってる医者の生活からするとリアリティがなくて、ちょっとしらけて、こんなんないよなーと思って、ずっと見続けることはないです。でも一般の方からすれば、医療ってこうあってほしいみたいなのがあって逆に人気なのでしょうね。
「私、失敗しないんで」というのが決め言葉のフリーランス外科医の美人女医のドラマは確かにおもしろい。かっこいいし、失敗しない、というのは医者に限らず人間の理想なのでこれほど受けるんでしょうね。しかし人間は失敗するものです。だからこそ慎重に、考えられるすべての準備をして医者は診療にあたるのです。外科医は病気のもとを切除してよくするという効果が目に見える治療をします。しかし手術はひとりではできず、必ずチームで行いますので、誰か突出した外科医がどこででも好きに手術する、というのは通常あまりないことです。チーム内の協力が欠かせないのです。優秀な外科医ほど、難しい手術の前には患者さんのデータを分析し、手術の方法をいくつか挙げ、何かアクシデントがあったときの対応をいくつも備えておきます。それは実際の手術時間の何倍もかかるのです。私なら失敗しないと豪語する医者より、黙って手術準備を完璧にする医者に手術してほしいなあ。
それからドラマでおかしいのは、大きな会議室でまるで株主総会みたいなカンファレンスを行ったりみんなで手術を鑑賞していることです。おいおい、みんな仕事あるだろう、病棟も外来も患者さんがいるのに、何してんだよーとつっこみをいれたくなります。
まあ、楽しみとしてのドラマなので目くじらたてることなく楽しんでいただければいいんでしょうが。あ、それと、どのドラマも若い美男美女、売れてる俳優さんを起用するのでそういう医者や看護師が活躍していますが、まあ、現場はベテランがしきりますので。統率する医師は禿げたり白髪だったりのおじちゃんが多いし、看護師長や主任もでーんとしたおばちゃんが多いです。若い奴はまだ下っ端。
現実、安心な治療は若いかっこいい美男美女という見かけではなく、経験の基づいた医師看護師のちゃんとした説明や指導や治療だと患者さんはわかっていただいていると思います。中身の充実が大切!