今月の独り言
ウイルスの病気
コロナ対象の発熱外来は閉じたものの、小児科外来の発熱患者さんは減らずに続いています。
今年は春から夏にかけてコロナ感染が蔓延しましたが、小児のあいだではいつもの感染症も、2年間流行がなかったぶん多いのです。RSウイルスは6月から増え始め7月がピークでした。乳幼児がかかると重症化したり肺炎になったりして入院が必要になりますが、当院では6~8月に12人が紹介入院となり、9月にも2人入院。10月からは熱がだらだらと5~7日続き咳がひどくなるヒトメタニュウモウイルスが大流行です。RSほど重症化はしませんが、熱が続く分何度も来院される患者さんが多く、保育園も1週間くらい休むことになります。検査キットが品薄なので全員の検査はできませんが、熱型と症状の経過でだいたい診断がつきます。患者さんはたくさんいますが、これだけ多いと重症化して入院した方も今まで4人います。RSもヒトメタニュウモもウイルスで、診断がついても特効薬はなく、対症療法しかないのです。よくなるまでしっかり支える治療体制も必要です。
そもそもウイルスはたくさんありますが、抗ウイルス薬があるのはわずかです。インフルエンザは特効薬があるので、検査で診断がつけば薬で発熱期間を減らし症状を軽くすることができます。まる2年間流行がないので、今年は大流行が予想されています。水痘・ヘルペスウイルスにも薬があります。新型コロナにも薬が開発されていますが、今は重症の場合にしか使用できません。
インフルエンザも新型コロナも、6ヶ月からワクチンが打てるようになりました。本当にどれだけ必要かは別にして、ウイルス感染の予防にはワクチンが有用ですので子どもたちにも行き渡ってほしいです。
ウイルスは生き延びたい・・・
台風やら低気圧やらつぎつぎに来て雨や風の多い9月でした。
熱で来院される患者さんはまだ多いですが、コロナはほとんどなくて、手足口病も下火になり、普通のかぜが増えてきました。普通のかぜというのは、特定のウイルスではなく、上気道炎もしくは咽頭炎をおこすウイルスで発熱、咳、鼻水などの症状をおこすものという意味です。熱がしつこく続き咳がひどくなるヒトメタニュウモウイルス感染も流行しているようですが、検査キットが手に入らず診断ができません。でも診断しても、ほとんどのウイルスには特効薬(抗ウイルス剤)はなくて、やることは同じ、対症療法なのですね。ちなみに抗ウイルス剤は、季節性インフルエンザと水痘・ヘルペスウイルスにはあります。新型コロナにもありますが、重症者に限られています。
ウイルス感染で重症者や合併症の起きる病気にはワクチンが勧められてきました。麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、B型肝炎は、乳幼児期に複数回接種することで感染を防げます。私が小児科医になった40年まえは、はしかの脳炎で亡くなったり、先天性風疹症候群やおたふくかぜの髄膜炎の患者さんは珍しくなかったのです。
でもさまざまなウイルスが、生体内で生き延びるためにいろんな形で変異しながら存在し続けます。今年は2年ぶりにインフルエンザも流行する兆しです。皆さんも気をつけましょうね。
熱だらけの夏
7月末から8月にかけて、子どもの発熱疾患がすごく増えました。もともと夏は、ウイルス性の発熱疾患が流行する時期ですが、今年はコロナ感染が混じっているので、普通の熱よりも防御体制が必要になりますが、話を聞いて診察してみないと、コロナか夏風邪なのかわからないし、検査もどれをするか決められない。ガウン、フェイスシールド、手袋など完全防備で診察するのはかなりしんどくて、人数が限られます。看護師の人数が確保されていればなんとか発熱外来をやっています。
夏休み入りたては、小学生のいきなりの高熱を調べるとほとんどコロナ陽性でした。保育園はいろいろ流行っていて鑑別が大変。RSウイルスは咳やぜいぜいがあると疑わしい。口周りやのどにぶつぶつがあって手足を見るとうっすらぶつぶつ。これは手足口病の始まりでほっとします。検査もいらないし悪化することもほとんどないからです。そのうち、旅行から帰ってきた夜に熱が出て翌日来院しコロナ陽性とか、お盆に実家に帰省して帰ってきたら発熱してコロナ陽性、というのも増えました。高熱は2日くらいありますがそのあとはみな元気に回復しています。
さて今週から2学期が始まりました。また集団生活が始まるとあちこちでコロナ感染が広がります。ずいぶんかかったことがある人も増えて集団免疫もあがってきていると思いますが、なかなか気を許せない2学期になりそうです。