今月の独り言
2023.1月です
年が明けて、インフルエンザが流行し始めました。1月後半から大流行になっているようです。コロナの感染もまた増えてきて、株が変わったため、2回目の感染ということもあり得ます。毎日、発熱の患者さんは隔離して、熱の出方や続き方、年齢や症状や周囲の感染状況を確認しながら、診察し検査し診断していくのでなかなか大変です。インフルエンザもコロナも陽性にならない、普通のかぜの熱も多いんですけどね。
風邪の症状というと、熱、鼻水、咳ですが、これはみな、上気道に侵入した病原体(ほとんどはウイルス)をやっつけようという身体の反応なのです。多くのウイルスは37度くらいの正常体温で増殖しやすいので、体温をあげて増殖しにくいようにする。ウイルスの種類によっては熱が上がったり下がったりを繰り返します。鼻水は鼻腔内に入ったウイルスに対する反応で、鼻水のなかにはウイルスがいっぱい入っている。咳もウイルスを出そうとする反応で、とくにのどにウイルスがつくとかわいたしつこい咳が出ます。咳はそのほかにも、小さい子では鼻水がのどに流れてそれを出そうとして咳するし、気管支や肺に炎症が起こるとそこにいる病原体を出そうとして痰のからんだ咳になるので、どこからの咳か、という診断が大切です。
熱も鼻水も咳も体の免疫反応なので、正常の健康体なら何も薬なしでよくなっていくはずですが、まあそうもいかない。熱が高ければ解熱剤、鼻水が出れば、鼻水を出しやすくする薬を出します。咳はどこからかの咳によります。ときどき咳止めをくださいという親御さんがいらっしゃいますが、咳は病原体を出す反応なので、強い咳止めは小児では使いません。とくに喘息があると、気管支のなかの痰を出そうと咳をするので、咳止めを使うと痰がつまることがあります。喘息発作のときには咳止めは禁止、とガイドラインには書いてあるのですが、知らない先生も多くてときどきあれっということがあります。のどからの咳ならのどの炎症止め、鼻水がたれての咳なら鼻の薬、気管支からなら気管支拡張剤となります。
そういう説明をしながらの診療なので時間がかかってます。お待たせしてすみませんね。寒い時期を元気に乗り越えましょう。
2022年末
年末になりました。
12月、寒くなっていろんな感染症が流行しています。春から夏にかけて増えていったん落ち着いたコロナもまた増えてきました。株が変異して、感染力は強くなりましたが、重症化率は減っています。熱が1-2日あって、咳も鼻もなくて元気な子を調べるとコロナ陽性ということがよくあります。熱が続くとか、咳がひどいときは風邪のことが多いのです。コロナも抗原検査が出回って家庭で検査している患者さんも増えました。でも家庭での抗原検査は注意点がいくつかあります。抗原は十分なウイルス量がないと陽性に出ません。なので、熱が出て数時間とか、家族にコロナが出て念のため無症状時とかに検査陰性でも信用できません。熱が出て24時間以上たってから検査するか、医療機関でPCRをするかです。また、鼻の穴に棒をいれて検体を取るのですが、しっかりとらないとウイルスが十分量取れないので、家庭では子どもが嫌がって動いて、うまく取れないこともあります。
秋に流行したヒトメタニュウモウイルスは減りました。しかし、嘔吐、下痢、発熱などの感染性胃腸炎がすごく増えています。熱はないこともあるし、吐くのは半日程度なのですが、下痢がなかなか治らないようです。最近下痢便は持ってこずに写メでみせてくれるお母さんが増えたのですが、ウイルス検査は現物がないとできません。嘔吐が数日続く子を病院に紹介したのですが、浣腸して出た便を調べたらノロウイルスでした、ということもありました。
クリスマスにかけて寒波もきます。みなさま生活に気をつけて元気で年末年始をお過ごしください。めちゃ忙しい診療の真っ最中ですがなんとか28日最終日までがんばります。
こどもの鼻アレルギー
子どもの鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)は増えていますが、藤田医科大学の近藤康人先生によると、4つの問題点があるとのことです。
一つ目は喘息との関連です。ある研究で子どもの喘息の平均発症年齢は2.8歳、鼻炎は2.9歳とわかり、喘息と鼻炎の発症年齢分布はよく似ていました。また、小児期のアレルギー性鼻炎は、小児期以降にも喘息の発症を3倍以上リスクを高めることがわかりました。就学前のアレルギー性鼻炎はアレルゲン対策や治療をすることで喘息の発症を予防できる可能性があります。
二つ目はいびきとの関連です。中等度以上のいびきでは、アデノイド、扁桃肥大と並んでアレルギー性鼻炎が危険因子であることがわかりました。またスギ花粉症患者に、花粉症シーズンに眠れない理由をしらべると、鼻炎症状が第2位でした。これもコントールが大切です。
三つめは学業との関連です。英国で国家試験の受験生を対象とした研究で、花粉の飛散期と非飛散期で試験成績を調べると飛散期では成績低下の危険が1.4倍となりました。日本の受験期2-3月はスギ花粉飛散期なので心配ですね。
四つ目は食物アレルギーとの関連です。PFAS(花粉-食物アレルギー症候群)は、ある特定の花粉抗原に感作されると、交差抗原性のある食品によってアレルギー症状が出ることをいいます。カバノキ科の花粉症ではリンゴやモモを食べると口の中がかゆくなる口腔アレルギー症候群や、マメ科の花粉では豆乳アレルギーが新たに発症することが増えています。日本でのPFASの有病率は小学校では0.99%、中学校で2.75%だそうです。また、カバノキ患者全体の20-40%にPFAS合併がみられると報告がありました。
鼻アレルギーとわかったら、アレルゲン対策をして、症状をコントロールすることが快適な子どもの生活につながると思います。