スマホに子守をさせないで!

先日路上で見かけた若いお母さん二人、それぞれにベビーカーを横にして、お出かけ中らしく立ち止まっているところ。いつも子どもたちが気になる私。ベビーカーを見ると、ふたりとも1歳から1歳半くらいの男の子で二人ともそれぞれスマホを握ってじっと見入っている。専門的見地からは、こんな小さな子にスマホを見せるのはやめてほしいです。目の発達にもよくないですが、何より人間としての発達によくない。

1歳といえば、歩けるようになり、言葉で気持ちを伝え始め、身の回りのいろんなものに興味を持って、なになに、これ?みたいに自分で動いて全身の感覚で新しいものを知っていく時期。それには五感が重要です。ベビーカーに乗っていても周りを通り過ぎていく人や路上の花や同じ目線で散歩している犬など、見て、においをかぐ。電車の音、鳥の声、ひとの話し声、聞いて耳をかしげる、なんだろう?土を触ったり、動く虫を触ってびっくりしたり、水たまりにはまって水の冷たさに驚いたり。食べ物も離乳食を終えていろんな味のものが入ってきます。いやだー、こわいー、きもちいいー、あれなにー、おいしー。感動でいっぱいです。おとなからみればバカみたいで時間の無駄に見えますが、あなたもそうやって初めての経験をして大きくなったんだよ。ベビーカーで大声を出したり、抜け出したくて暴れたり、目的の場所に移動したいだけのお母さんには迷惑でしょうが、こどもの目線に降りて、どうしたの、なにがあったの、なにが見えたの、と話しかけることで親子のコミュニケーションがとれて、お母さんは子どもの気持ちを推し量る練習になるのです。え、こんなものがおもしろいのーとつい笑っちゃって、子どもの新鮮な感性に気づきます。

スマホの動画は動くので子どもはじっと見入りますが、一方通行です。触れないしにおいもないし、問いかけても疑問に思っても相手に通じません。おとなしくしているので親には便利ですが、日常的にスマホに子守をさせているなんてもったいない。今の若い方は日常にスマホは当たりまえですし便利なツールですから、調べ物をしたり道先案内をしてもらったりそりゃ必要でしょうけど、自分がたいくつなときになにげにスマホを開けるみたいな感覚で小さい子どもに渡さないでください。電車の中でもベビーカーの子どもがもぞもぞしているのにお母さんは全く子どもを見ずにスマホに夢中、ということも珍しくなくなりました。公共機関で子どもが泣いたり暴れたりすると冷たい目で見られるからスマホで黙らせるんだという反論もあるかもしれませんが、泣いたり暴れたりしてる子どもがなにを訴えているかに気が付いていくのが子育ての重要なところです。もちろんひとりで抱え込んで虐待に追い込まれる構図もあるので、身近なひとや相談者や育児サークルや、むしろいろんな場に出かけて行って、子どもの感性に気がついてください。こんなおもしろい機会はめったにないのにー!

お散歩にいい季節になりました。てこてこ歩いてお出かけして、子どもが道端のアリンコに気づいてじっと見る、お花をつんでママに上げる、ドングリを拾ってポケットに大切にしまう。そんな大切な贅沢な時間を大切にしてください。忙しいお母さんであるほど、ふと立ち止まって子どもとじっといろんなものを共有すると、いろんな新鮮な気づきがあるでしょう。放っといても10数年もすれば、話したくても子どもはスマホばかり見てお母さんなんて相手にしませんよ。今この大切な時期、もったいないことです。

いくつになっても恐竜ガール

先日の休みに、東京上野の国立科学博物館でおこなわれている「恐竜博2019」に行ってきました!恐竜はもとから大好きです。だってあんな大きないろんな、今はない形の生物が、かつてこの地球上に、しかも1億7000万年ものあいだ繁栄していたって、すごいじゃないですか?それがいろんなところで発掘され、研究され、新たなことが証明されていく、というのは科学としても興味深いけど、探検のようなわくわく感があります。北海道大学の小林快次先生の、「恐竜まみれ」(新潮社)という本が面白くて、恐竜学者の発掘現場の実態がよくわかります。お勧めですよ!

今回の展示の目玉のひとつは、日本で初めて北海道のむかわ町で発掘された、新種の恐竜の全身骨格です。アマチュアの化石好きのおじさんが見つけた尻尾の骨が、海の地層から発見されたから、ワニかなにかと思われて7年も地元の博物館の倉庫に眠っていたのです。それを、東京から来た古生物学者の先生がこれは恐竜の骨だと確定、北大の小林先生が指揮を摂って、全身の骨格を掘り出しました。予算もいるし、人手もいるし、発掘事業は大変ですが、8年かかって全身の骨の88%を掘り出しクリーニングし、今回全身の骨の展示となったのです。地上にいた恐竜が死んで海に運ばれそのまま海の地層に化石として残ったという、当時の状況を予想しながらあるはずの骨を探り当てる過程が本に書かれていて、すごくおもしろかったです。ちなみにこれはむかわ竜と呼ばれていましたが、このたび「カムイサウルス」と学名が決まりました。

もうひとつの目玉は、モンゴルで50年かけて全身がそろった大型の新種恐竜、「デイノケイルス」です。恐竜発掘の国際チームで、これに小林先生も参加しているのですが、初めは腕が2.4mもある骨が出てきて、どんな恐竜かとわくわくしていたんですって。その全身骨格の本物が展示されていましたがその見上げる迫力!全身11mもあります。でもCGで再現されると、ちょっと笑っちゃうようなおちゃめな風貌。どう猛な肉食恐竜ではなく、草を食べていた証拠の胃石も見つかっており、手は大きいけど口はカモノハシのようなくちばしで、背中にはスピノサウルスのような帆を背負い、毛におおわれて今まで見たことのない新種の恐竜です。そのほかにもいろんな恐竜の展示があり、CG画像で恐竜世界を楽しめたり、めっちゃ楽しい空間で、おばさんひとりで興奮していました。周りは子供連れもシニア夫婦もいたけど、誰が見ても面白いと思う。いくつになっても恐竜ガールします!

恐竜の骨はいろんなことを教えてくれます。恐竜は6600万年前に絶滅したといわれているけれど、実は進化して鳥として現代にも生きているし、恐竜の生きた時代にくらべれば人類なんてほんのちょっとの新参者。しかもこの100年で、戦争だのテロだの、温暖化や森林伐採による環境破壊など、人類は発展しているように見えて自分たちで滅亡に向かっている。それも大きな自然の経過なんでしょうが、何万年も生き延びないと思うなあ。

花粉関連の食物アレルギー

花粉症の患者さんが増えるにつれ、花粉からくる食物アレルギーが増えています。ある花粉に感作されている(IgE抗体を作ってもっている)と、その中の特定のタンパク質によく似たタンパク質を持っている果物や野菜にアレルギーを持つようになる(交差反応という)のです。多いのは、シラカバやハンノキの花粉症で、リンゴやモモを食べると口のなかがかゆくなる、違和感がある、というもので、口腔アレルギー症候群(OAS)と言われます。それ以外にもいろいろ報告され、花粉関連の食物アレルギー(PFAS)といわれるようになりました。

 今年の6月小学生男子が、ときどき学校給食を食べた後蕁麻疹やかゆみの症状が出るのですが原因がわからないので、専門医である当科に相談に来られました。献立はいろいろですが、カレーが多いのに気づきました。でも家ではカレーを食べているとお母さんは言います。よく聞くと、花粉症があり、検査をするとスギのみならず、ヨモギの感作も重症でした。ヨモギの花粉と交差反応でセリ科のスパイスアレルギーの報告があったことを思い出して調べてみました。市の教育委員会の栄養士に問い合わせると、給食のカレーはE社のカレー粉を使っており、いろんなスパイスが混ざっていました。スパイスの検査は血液検査にないので、プリックテストといって、直接食品を皮膚につけてひっかくことで反応を見て証明するしかありません。E社に連絡して、スパイスを提供してもらうことができました。小学生に夏休みに来てもらって彼のプリックテストをすると、たくさんのスパイスのなかで、セリ科のスパイスであるクミン、コリアンダーに陽性でした。食べてかゆいといっていたアスパラガスも陽性で、これもヨモギ花粉と交差するのだそうです。そのほか、セロリ、ニンジンなども症状がでる可能性もあります。ちなみに家のカレーはG社のお子さまカレーで、あまりスパイスが入っていないのでした。この例も花粉関連の食物アレルギー(PFAS)です。

 食べるのは毎日のことなので、アレルギーの原因食品を確定するのは大切なことです。この小学生も原因がわかると、給食を全部やめる必要はなくなりました。こういう患者さんが増えてきて、ずいぶん頭をひねったり調べたりしますが、無事診断がつくと私もほっとしてうれしくなります。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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