今月の独り言
夏かぜって?
早々と梅雨が明けて、暑い夏がやってきました。小児科の外来では、発熱のお子さんの受診が増えていますが、何といった病気ではなく、夏かぜが多いです。
インフルエンザやアデノなど検査しても陰性です、というと、あ、じゃ感染症じゃないんですね、とおっしゃる保護者さんがいらっしゃいますが、いやいや感染症ですよ、原因病原体がわからないだけで。病原体の名前のついた病気だけが感染症と思っていらっしゃるのですね。
小児の発熱のほとんどは感染症によるものです。熱中症の発熱は感染症ではないし、白血病や膠原病など全身疾患で熱が出ることはありますが、全体から見るとまれなものです。ウイルスや細菌が体の中に入ると、体はまず熱を出して反応します。そのあと熱がどのくらい続くか、他にどんな症状が出るかは、原因の病原体によるのです。
はしかや風疹、百日咳、水ぼうそうなどは病態がはっきりわかっている病気で、重症になる、合併症がある、ということでワクチンがつくられ、しっかり接種してもらうとほとんどかからないし、流行もほとんどないのです。
夏かぜというのも、ウイルスによる熱をともなう感染症ですが、症状が軽くて自然に治ることが多いので、ウイルスの検出もしないし病名もつかないのです。ヘルパンギーナや手足口病は夏に流行するウイルスの感染症なので、夏かぜの一種といってもいいかもしれません。ヘルパンギーナはのどに発疹がでて、発熱と咽頭痛が強く、原因はコクサッキーAウイルスです。手足口病は、手のひら、足のうら、のどに水疱疹ができ、原因はコクサッキーやエンテロウイルスです。このふたつは症状で診断がつきますが、原因ウイルスを検出する方法は一般にはありません。
咳や鼻水がすこしあって熱が1~2日出て、わりと元気で治っちゃうものを私は夏かぜといって患者さんに安心してもらうようにしています。