今月の独り言
アオバズクの夏
ホントに今年の暑さはどうかしている。8月31日というのに大阪の予想気温は37度でっせー。もういい加減暑さに疲れ果て、うんざりですね。
通勤で朝夕駅まで10分くらい歩くのですが、途中の空き地に大きなスズカケノキという木があります。6時半に家を出るので、まだそんなに暑くなくて日陰も多いのですが、7月のある日から、朝その木の周りにおじいちゃん、おばさんたちが10人前後集まって、カメラや望遠鏡をのぞいている。それが毎朝なので、ある日何があるんですか?と聞いてみるとアオバズクが巣をつくっているとのこと。確かに教えられた方向に、木の枝にとまったフクロウが見えました。
アオバズクは初夏の青葉のころやってきて繁殖するのだそうです。木のうろにいる卵やかえったあとのひなは見えませんでしたが、皆さんはずっとそこで観察しているのでした。ひながかえると28日で巣立つのだそうです。8月最後の週には観客がだんだん減って、とうとう誰もいなくなりました。アオバズクに暑い夏のささやかな楽しみをいただきました。
暑い暑い
暑い暑いとそれしかないこの夏です。
夏の感染症といえば、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱(咽頭結膜熱)が有名ですが、最近はよく似ているけれど症状がすこし変化した感染症になってきている気がします。足から始まる発疹が広がり、手のひらにもあるので、あら手足口病かしらと思っていたら、熱も出ないし口の中にはぶつぶつないし、あら体にも発疹がでてきた。本人は元気で結局痛くもかゆくもない発疹1週間で治っちゃった、みたいな。まあ、皆元気で合併症もないのですが、診断の名前がつかないとちょっともやもやします。
6月は映画「国宝」を見ました。評判になっていますが、歌舞伎のシーンがすごくきれいで迫力があって、俳優さんたちの演技も感動もの。お勧めです。吉田修一の原作もよかったです。
7月は「鬼滅の刃 無限城編第一章」を見てきました。最近の映画にしては珍しく満席で、いくつものスクリーンで1時間ごとに同時上映するという大ヒット。鬼滅の刃はすごくはまって、前はクリニックの壁にもぺたぺたキャラクターシールを貼っていました。原作は2020年に完結しているし、アニメも2年以上間が空きましたが、久しぶりの映画もアニメの完成度が高くてよかった。もともとのお話がいいし、漫画の原画の迫力もあって、アニメもヒットしたと思います。
推しは冨岡義勇さんで、5年前は水の呼吸の10の型をすべてマスターしていたんですけどねえ(いや、実際に技ができるわけではないけど、「壱の型、水面斬り!」と叫んでポーズをとる、というのを拾の型まで全部できてました)。
まあ暑い夏を、映画やアニメや小説や漫画でなんとか楽しく過ごそうと思います。
夏かぜって?
早々と梅雨が明けて、暑い夏がやってきました。小児科の外来では、発熱のお子さんの受診が増えていますが、何といった病気ではなく、夏かぜが多いです。
インフルエンザやアデノなど検査しても陰性です、というと、あ、じゃ感染症じゃないんですね、とおっしゃる保護者さんがいらっしゃいますが、いやいや感染症ですよ、原因病原体がわからないだけで。病原体の名前のついた病気だけが感染症と思っていらっしゃるのですね。
小児の発熱のほとんどは感染症によるものです。熱中症の発熱は感染症ではないし、白血病や膠原病など全身疾患で熱が出ることはありますが、全体から見るとまれなものです。ウイルスや細菌が体の中に入ると、体はまず熱を出して反応します。そのあと熱がどのくらい続くか、他にどんな症状が出るかは、原因の病原体によるのです。
はしかや風疹、百日咳、水ぼうそうなどは病態がはっきりわかっている病気で、重症になる、合併症がある、ということでワクチンがつくられ、しっかり接種してもらうとほとんどかからないし、流行もほとんどないのです。
夏かぜというのも、ウイルスによる熱をともなう感染症ですが、症状が軽くて自然に治ることが多いので、ウイルスの検出もしないし病名もつかないのです。ヘルパンギーナや手足口病は夏に流行するウイルスの感染症なので、夏かぜの一種といってもいいかもしれません。ヘルパンギーナはのどに発疹がでて、発熱と咽頭痛が強く、原因はコクサッキーAウイルスです。手足口病は、手のひら、足のうら、のどに水疱疹ができ、原因はコクサッキーやエンテロウイルスです。このふたつは症状で診断がつきますが、原因ウイルスを検出する方法は一般にはありません。
咳や鼻水がすこしあって熱が1~2日出て、わりと元気で治っちゃうものを私は夏かぜといって患者さんに安心してもらうようにしています。